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2023.10.03

【潮流】アドベンチャーツーリズムへの期待

 アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)が、9月11日から9月14日にかけて、札幌コンベンションセンターをメイン会場として開催される。ATWS終了後の9月15日から18日にかけては、釧路市、帯広市、稚内市、旭川市の道内4地域で「ポスト・サミット・アドベンチャー」が開催される。同サミットには世界約60カ国から旅行会社、メディア、ツアーオペレーター、アウトドアメーカー、政府観光局、観光協会、DMOなど約800名の関係者が参加し、アドベンチャーツーリズムのツアー体験、講演会、セミナー、商談会等が実施される。
 アドベンチャーツーリズム/アドベンチャートラベル(AT)は、「自然」「アクティビティ」「文化体験」の3要素のうち2つ以上で構成される旅行と定義される。観光庁ではアドベンチャーツーリズムの旅行者は、旅行を通じて自分自身の変化や視野の拡大、学び等を得ることを目的とし、個々のコンテンツの質の高さは当然として、旅行者それぞれの興味・関心に応じたテーマ・ストーリー性のある滞在プランなど、その地域ならではの体験を求めていることが特徴としている。
 新型コロナウイルスは5類に移行されたが、コロナ禍を経て、観光でも密集を回避した旅行形態の変化が求められる中で、自然・文化などのわが国の豊富な地域資源を活用し、日本の本質を深く体験・体感できるアドベンチャーツーリズムを推進することは、国内外の観光客の消費額増加や満足度向上に繋がることが期待される。
 そうした中で、JTBは10月1日から来年3月31日までの半年間、国内旅行キャンペーン「日本の旬 アドベンチャーツーリズム」を初めて展開する。開催期間中に全国で222プランを設定し、地域への永続的な送客に寄与することをめざすという。全国でアドベンチャーツーリズムの要素である「自然」「文化体験」「アクティビティ」の旅を通して旅行者自身の自己変革を促すとしている。
 アドベンチャーツーリズム、アドベンチャートラベルの略称は「AT」だが、同キャンペーンのロゴは「アドベンチャーツーリズム」の略称の「AT」をデザインした。「AT」をアドベンチャーツーリズムの略称として定着することも注目される。
 また、業界では「ツーリズム」という言葉は定着しているが、一般には「トラベル」が広く浸透しており、ATも「アドベンチャーツーリズム」と「アドベンチャートラベル」の二通りで表記されている。この際、どちらかに統一したほうが分かりやすいかもしれない。
 JTBは「日本の旬 アドベンチャーツーリズム」で、「自然×アクティビティ」「自然×文化体験」などを組み合わせた旅行商品を設定。「コロナ禍を経て、地域の魅力を再発見し、国内旅行の魅力を再認識し、その土地ならではの自然体験・文化体験を楽しむ旅のニーズに応え、アドベンチャーツーリズムの魅力を発信することで、地域に訪れるきっかけを創出する」。
 とくに、「永続的に取り組む」ことを強調しており、一過性に終わらず、アドベンチャーツーリズムの旅行形態の一つの柱として取り組んでいく方針を示している。
 一方、KNT-CTホールディングスは子会社の近畿日本ツーリストがサミットを開催する「Adventure Travel Trade Association(ATTA)」に2019年から参画しており、2022年からはKNT-CTホールディングスがグループ全体でATに取り組んでいる。
 アドベンチャーツーリズムは主に欧米豪で人気が高まっており、訪日インバウンドの「高付加価値旅行」とリンクする。国内にアドベンチャーツーリズムが広まれば、それだけ滞在消費額が拡大する。旅行の地方分散化、オーバーツーリズム、持続可能な観光に寄与することが期待される。
 一方で、自然・文化環境への不適切な管理や過度な利用は、環境破壊や文化的な摩擦を招くリスクもはらんでいる。また、オーバーツーリズムへの懸念もあり、こうした対策を強化することが必須で、事業性と持続性を両立してアドベンチャーツーリズムの拡大に取り組むことが求められる。(石原)