【潮流】海外旅行70%回復は必須
財務省によると、2023年の旅行収支は3兆4038億円の黒字で、コロナ前の2019年の2兆7024億円を7000億円以上も上回る過去最高を記録した。旅行収支だけを見れば、わが国は世界に先駆けてコロナ禍を脱したという見方もできる。これも、円安による賜物だが、加えて、現地物価高、燃油サーチャージなどによる日本人海外旅行の回復の遅れが、旅行収支の大幅な黒字を生み出した。
古い話をすると、1986年に海外旅行者数を当時の552万人から5年間で1000万人に倍増する「テン・ミリオン計画」(海外旅行倍増計画)が実施された。 結果的にテン・ミリオン計画は、1990年に1年前倒しで1000万人を達成した。
この計画の背景には当時、米国などから指摘された貿易不均衡の問題を受けて、貿易収支の黒字をテン・ミリオン計画による旅行収支の赤字幅拡大で減らそうということがあった。日本人のアウトバウンドがバブル経済を背景に上り調子で、一人勝ちのような状態だったこともある。