ビジネスイベントにおけるサステナビリティ: 目標からその効果まで
英国グラスゴーで昨年秋に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)を受け、サステナビリティの話題が人々の関心事となっています。例えば、MICE発注者(協会や組合、企業、カンファレンス運営者)は皆、効果的な施策や良い結果の実現に意欲的です。
人間が引き起こした温暖化により地球の気温が上昇し続けていることから、温室効果ガス排出量を削減し、産業革命以前からの気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えること(パリ協定の気候安定化目標)が世界の急務です。
タイのプラユット・ジャンオーチャー首相はCOP26での演説で、気候変動は「死活問題」であり、ゆえにタイは2065年までにネットゼロ・エミッションの達成を目指す決意をしたと強調しました。また、2035年までに電気自動車を1,500万台に増やすなど、気候変動防止に必要なあらゆる措置を講じると宣言しました。
バンコクではすでに、こうした目標への取り組みが始まっています。2021年10月、バンコク大量輸送公社の新たな取締役Kittikan Chomdoung Charuworaponkul氏は、首都を走る燃費の悪いバス200台を電気自動車に替える計画を発表しました。
タイでは先進的な国家開発戦略「タイランド4.0」の一環として、自動車生産において電気技術や次世代技術を重視しています。この戦略には、製造工場をよりクリーンで環境にやさしくし、そしてデジタルを活用するインダストリー4.0計画の導入も含まれています。
しかしながら、炭素排出量削減の取り組みは技術面にとどまりません。気候問題に取り組むため、2022年末までに全国で1億本の植樹を行うと、COP26でプラユット首相は明言しました。気候変動の影響を最も受けやすい国の上位10か国にタイが入っていることがその理由です。
COP26の他の重要課題には、地域コミュニティーとエコシステムのレジリエンスを保護・向上させること、民間金融部門を結集してグローバルネットゼロを実現する構想に対して資金提供をしてもらうこと、民間企業・非営利団体・諸官庁のあいだの連携を強化することなどがあります。
観光・イベント産業にとって、これは報奨旅行やビジネスイベントを企画する際に、カーボンフットプリントを削減しつつ先住民族や地域コミュニティーに力を与えることを意味します。地域コミュニティーや小規模農家は気候変動の影響を軽減する助けとなりうるため、より多くの注意が向けられるべきです。地域資源の保全管理に参加してもらうことで、食糧安全保障に役立ち、気候変動の影響を軽減することができるのです。
MICE関係者は、ランチやディナーで提供するキャビアやサーモンといった食材を輸入するのではなく、地産食材のみを調達して料理を作る地元企業を支えることができるのです。チェンマイでChef TuTuが経営する「Food for You」では、緑が生い茂る景色を楽みながらシェフが作る素朴でおいしい料理を堪能することができます。また、有機栽培の茶畑Araksa Tea Gardenを訪ねることで、コミュニティー内で女性の雇用が生み出され、訪れた人々は100%オーガニックの爽やかなお茶を摘み、焙じて味わうまでを体験することができます。MICE関係者がコミュニティーと環境の持続可能性を支えつつカーボンフットプリントを削減できる方法は数多くありますが、これはそのごく一部の例にすぎません。
合同会議事業審議会(JMIC)はまた、イベント業界の関係者に対し、2021年10月に立ち上げたネットゼロ・カーボンイベント(Net Zero Carbon Events)構想への参加を呼びかけています。これは2050年までにネットゼロの排出量目標を達成することを掲げ、以下に取り組むものです。
● 直接・間接を問わず、業界のサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を測定できる共通の方法を開発する。
● 2050年までのネットゼロ、2030年までの排出量削減に向けた、業界全体で活用できるロードマップ(パリ協定に従い、主要課題に取り組むためのサポートやアドバイスを盛り込んだもの)を作成する。
● 整合性や共通の手法を確実なものとするため、業者・顧客との連携を進める。
● 進捗状況の報告やベストプラクティスの共有を図るための共通の仕組みを確立する