ウイングトラベル
変なホテル、中規模施設軸にチェーン拡大へ
澤田社長、都内で無人ホテルの展開にも意欲
エイチ・アイ・エス(HIS)の澤田秀雄会長兼社長は、4月25日に都内で開かれた会見に出席し、ロボットによるオペレーションなど生産性重視の宿泊施設「変なホテル」の展開において「客室数は最大で200室というものが基準となるだろう」と述べ、100室台の中規模クラスの施設を軸としてチェーン拡大を進めていく考えを示した。さらに「法律面での課題があるが」と前置きした上で、「国内外100店舗体制を目指していく中で、東京都内に無人ホテルを作りたい」と述べ、さらなる生産性向上を追求した宿泊施設作りの展開に意欲を示した。
変なホテルは2015年に長崎・ハウステンボスに1号店を開設。その後、東京都内を中心にネットワークを拡大。今月27日には6軒目となる「変なホテル東京 浜松町」が開設する。
同社は変なホテルの展開にあわせてさまざまなロボットを開発し、省人化を実現。長崎のホテルに関しては「一般的な同規模のホテルに比べて4分の1程度の人員で運営できるようになっている」と強調した。
HISはグループのHISホテルホールディングス(HHH)を通じて宿泊事業を展開。今後5年をめどに変なホテルを中核に国内外で100軒の展開を目標に設定している。そうした中で変なホテルに関しては「現在構築できている運営体制を考えると、最大でも200室程度が上限なのではないか」と指摘。現在、3期工事が進むハウステンボスの変なホテルや今年10月にオープン予定の「変なホテル 東京羽田」の200室クラスが最大規模と位置づけていく考えを示した。
ホテル運営ノウハウ「中国の企業が高い関心」
また、同社は直営ホテルの展開とあわせて、変なホテルで培った高生産性を実現したビジネスモデルのノウハウを国内外の宿泊事業者に提供していくビジネスの展開も模索している。これに関しては「中国の企業が高い関心を示している」と澤田社長は述べ、今後アジア圏を中心に広がりを見せていく可能性があることを強調した。
変なホテルは「変わり続けていくこと」をコンセプトに事業を進めており、ロボットによるオペレーションにとどまらず、利用客の満足度の向上に対するさまざまなサービスを展開している。澤田社長は「ロボットに関してはまだまだ進化の途上。今後ももっと進化させたい」と話す。そうした流れの中で「100軒体制を実現を目指していく中で、無人ホテルを都内で展開したい」と述べ、人が介在しない宿泊施設の実現に向けて、さらなる開発を進めていく考えを示した。
■6軒目の変なホテル「健康」と「快眠」テーマ
医療クリニック併設、ビジネスマン需要獲得へ
HISホテルホールディングス(HHH)は全国6軒目の変なホテルを東京・浜松町に建設し、4月27日から営業を開始する。新施設は初の試みとして、医療クリニックを併設。オーダーメードの予防医療や治療を行う。また、健康関連事業を展開するファイテンが完全プロデュースした客室を用意。宿泊客に対して、ヘルスケアの観点からリラックスできる空間を提供する。新施設はビジネス街であるとともに、羽田空港へのアクセス拠点となる浜松町に立地していることから、出張で東京を訪れるビジネス客や訪日外国人旅行者を主要ターゲットとしていきたい考えだ。
新ホテルは「変なホテル東京 浜松町」として展開する。JR線、東京モノレールの浜松町駅、都営地下鉄浅草線の大門駅から徒歩3分圏内の立地にオープンした。客室数は118室で、シングルルーム、セミダブルルーム、ツインルーム、タワーデラックスツインルームの4種類の客室を用意した。宿泊料金は1泊1万2000円からに設定した。
浜松町のホテルも既存の変なホテル同様にフロント業務や清掃などがロボットが担当する。また、客室内には無料貸出携帯電話「HANDY」やクローゼット型の衣服クリーニング機「LGスタイラー」を用意した。また、レストランを併設し、朝食、昼食、夕食を提供可能な環境を整えた。
このほか、浜松町で初めて展開する取り組みがホテル内での医療クリニック展開とファイテンとコラボした客室「ファイテンルーム」の展開だ。
医療クリニック「AI(アイ)ロボクリニック」は医療コンサルティング事業を手がける医道メディカルがプロデュースした。同クリニックの診療科目は内科、皮膚科、歯科となっており、それぞれの医師が常駐し治療を受けることができる。また、受付や来院予約などはロボットが対応。省人化を図っている。このほか、遺伝子検査や腸内フローラ検査を導入して、検査結果に基づくオーダーメード型の予防医療を行うほか、国内外の専門医の紹介やネット環境を使った健康相談などを行うことができる。なお、同クリニックは自由診療となっており、公的医療保険の適用外となる。
今回、ホテルにクリニックを併設することのメリットについて医道メディカルの陰山康成社長は「例えば、歯科金属アレルギーの短期集中治療では遠方や海外からの来院患者が宿泊しながら治療できるようになるなど、内科・皮膚科の診療でも余裕をもって治療に臨むことができるなどのメリットがある」と指摘。今後も、ホテルとのメリットが享受できるような診療科目の追加や、ロボットによる対応に関しても進化させていくとしている。
また、ホテルの3階を「ファイテンルームフロア」とした。このフロアは客室と廊下すべてに心身のリラックス効果が得られるファイテンの「アクアチタン」を施した素材を展開。また、客室には足の疲労回復に効果がある「中足骨マッサージ」を自動で行うことができるフットマッサージ器を配備。リラックス効果を得ながら快適な滞在が可能となる空間を演出した。
このほか、レジャー客を対象としたサービスとして、スマートフォンをかざすだけにレストラン情報の提供やタクシーの配車、トラベルガイドの手配、レンタサイクルの利用手続きなどが行うことができる「スマートプレート」を設置。ホテルを起点とした観光に便利なサービスを手軽に利用できる仕組みも採用した。スマートプレートはサービスメニューの拡大が手軽に行うことが可能。今後はアクティビティ予約ができる機能も搭載する予定だ。
※写真=記者会見で医療クリニック併設型のホテルについて説明を行った関係者。写真左からHISホテルホールディングスの岩間雄二副社長、HISの澤田秀雄会長兼社長、医道メディカルの陰山康成社長、榎堀理加マーケティング部部長
※写真=「変なホテル東京 浜松町」の外観
※写真=AIロボクリニックの待合スペース、ロボットが応対し、予防医療に関する相談などを行うことができる