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2018.05.11

ウイングトラベル

需要拡大、地方創生にハッピーマンデー存続を

観光関連団体が合同会見、海の日固定化に反対

 日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)など旅行・旅館・ホテルなどの観光関連6団体、JR東日本、日本航空、全日空各社は合同で記者会見し、東京五輪・パラリンピック後の2021年以降のハッピーマンデー(祝日3連休)存続を改めて訴えた。超党派の国会議員による海事振興連盟が、東京五輪混雑対策で海の日の7月23日移動を条件に、2021年以降に海の日の7月20日固定化に動いていることに対して、「ハッピーマンデーは国民に定着しており、旅行需要拡大、地方活性化にに大きく寄与している」として存続を強く訴えた。
 団体を代表してJATAの田川博己会長は、「祝日の一部を月曜日に移して土・日と合わせて3連休とするハッピーマンデー制度は、1998年に国民運動として設定された。既に20年近く立っており、現在日本各地への宿泊旅行、長距離旅行に定着している。一方で、2020年の東京五輪・パラリンピックの開会式、閉会式の交通混雑を避けるために、海の日、山の日、体育の日を移動させる検討が進んでいる中で、2021年以降、海の日等を固定化する動きが見られる」と牽制した。

 

 田川会長「大都市から地方へ誘客の切り札」
 国民運動で制定、あらゆる世代の支持で定着

 田川会長は、「観光関係者としては、以下の3つの理由でハッピーマンデー祝日三連休の維持が必要不可欠」と強調した。
 第1に、観光は地方創生の切り札であり、とくにハッピーマンデーは大都市の旅行者の地方への誘客の機会となっている。
 第2に、働き方改革が政府の最重要課題の中で、有給休暇の取得が半分程度にとどまっているのが現実で、貴重な三連休を分断することは、休む機会をさらに奪うことになりかねない。
 第3に、ハッピーマンデーは653万人の署名と849の自治体の採択により、国民運動として得られたものであり、若年層から働き世代まで国民の幅広い支持を得られているとした。
 田川会長は「われわれ観光関係者は東京五輪・パラリンピック成功に向けてあらゆる努力を払い、開会式。閉会式の祝日移動に大いに賛成するが、そのことと海の日固定化は別の問題」と指摘。一方で「我々は海の日のイベントや旅行商品を積極的に盛り上げており、その定着に努めている」と海の日の理解と啓蒙、送客に協力していることを強調した。

 

 地方への家族旅行が拡大、宿泊日数も増加
 出張ビジネスも増加、鉄道・航空需要も拡大

 ANTAの有野一馬専務理事は、「ANTAは全国の旅行会社5600社が加盟している。地方に家族で行くためには2泊3日が必要不可欠で、祝日三連休制度は20年を経て、国民生活に定着している。とくに20歳代、30歳代前半の若い層に支持されている。こうした良い制度を今後も継続して、国民生活の向上に資することを期待する」と述べた。
 日本ホテル協会の福内直之専務理事は、「ハッピーマンデーは有給休暇が取りにくい中、家族揃って2泊3日の距離のある旅行の機会を提供している。また、(海の日が)夏休み初めということで、家族旅行をはじめ旅行がしやすい環境になり、観光交流の拡大による地域活性化、地方創生に果たす役割は大きい」と指摘した。
 日本旅館協会の佐藤英之専務理事は、訪日インバウンドが飛躍的に増えて、宿泊業界も恩恵を受けているが、地方は今も日本人旅行者がメインで、祝日三連休がなくなると地方の宿泊者が減少し、地方創生にはマイナスの効果しかない。ぜひとも祝日三連休制度の維持に理解をいただきたい」と述べた。
 全日本シティホテル連盟の粉川季雄専務理事は、「海の日が固定化されると、ビジネスが停滞することを危惧している。飛び石連休の時代は出張、ビジネスが止まった状況だった。そうした面からもハッピーマンデーの継続を要望したい」と語った。
 日本観光振興協会の相京俊二常務理事は、「平成8年に祝日三連休会議を設けて、議員立法で祝日三連休を実現した。その時も関係都道府県、観光協会、多くの自治体の賛同を得て実現した。祝日三連休が国民に日常化しており、7割以上が存続を求めている。とくに、旅行需要が減少している若者の需要喚起になり、国民の支持を得ていることに理解をいただきたい」と要望した。
 JR東日本総合企画本部の黒田英朗観光戦略室長は、「20年近くハッピーマンデー制度が続く中、国民の間に定着しているとともに、人口減少が始まる中で、地方の活性化、地方創生が大きな課題になっている。そうした中で、三連休になることによって、大都市圏、首都圏から地方へ旅行することに非常に効果がある。地方活性化のためにはこの制度が不可欠で、海の日の固定化は伸長な議論が必要。2020年の東京五輪・パラリンピックの成功は賛成だが、2021年からの海の日固定化は慎重に議論してほしい」と述べた。
 JAL旅客販売統括本部の佐々木政茂企画部長は、「ハッピーマンデーは航空需要喚起の観点から制度の継続を要望したい。JALは昨年度から地方創生に取り組んでいる」と述べ、地方創生にハッピーマンデーが重要な役割を果たしていることを強調した。
 ANAマーケティング室の藤崎良一観光アクション部長は、「航空需要は通常の連休よりも三連休のほうが平均1割増える。3日あれば遠くに行きたい。せっかく休むなら初めての所へが心情。遠くに行ったら土産を買い、体験し、経済効果も大きい。ハッピーマンデーをぜひ継続したい」と述べた。

 

 2泊3日で海外旅行拡大、働き方改革にも貢献
 海の日三連休の固定化で経済損失2000億円

 田川会長によると、ハッピーマンデー制度維持に向けて、今回の会見を経て、自民党の観光立国調査部会、自民党内閣第一部会でも話すよう準備している。とくに、5月17日の内閣第一部会では、観光関係団体と海事関係団体による合同ヒアリングが予定されている。また、昨年と同様に、ハッピーマンデー存続に向けて総決起集会を開催を予定している。
 田川会長は、「我々は一貫して祝日の固定化に反対している。1泊2日と2泊3日では、移動の時間、宿泊数が全く違う。それは、海外に行くか、国内旅行するかの違いにもなる。そのことは政府・自民党も理解しており、昨日、今日の話ではない」と指摘した。
 海の日を三連休とした経済波及効果は、JATAの試算によると、旅行消費額で2388億円、経済波及効果は4776億円で、固定化すると旅行消費のマイナスは1034億円、経済損失は2068億円に達するとしている。
 田川会長は、内閣第一部会での業界団体ヒアリングで、ハッピーマンデーの意義を話す予定で、ANTA会長でもある二階俊博自民党幹事長の賛同も得て、ハッピーマンデー存続を訴えていく方針。「国が観光立国、観光先進国をめざし、地方創生、働き方改革の推進にハッピーマンデーは絡んでいる」と強調した。
 また、会見に同席した坂巻伸昭JATA副会長は、「働き方改革の中でのハッピーマンデーの位置付けは、長期の連休があることで、ある程度の長距離旅行、ロングステイに繋がる可能性が高い。働き方改革の中で、休みをつなげることにより、国内旅行のロングステイの需要が出てくる。また、インターネット、SNSの普及で、旅行が直近に動く傾向にある中で、その背中を後押しするハッピーマンデーの存在は大きく、働き方方改革つながっていく」との見解を示した。

 

※写真=合同記者会見でハッピーマンデーの存続を訴える田川博己JATA会長

 

※写真=観光関連6団体。左から相京俊二日本観光振興協会常務理事、佐藤英之日本旅館協会専務理事、坂巻伸昭JATA副会長、田川博己JATA会長、有野一馬ANTA専務理事、福内直之日本ホテル協会専務理事、粉川季雄全日本シティホテル連盟専務理事

 

※写真=左から藤崎良一ANAマーケティング室観光アクション部長、佐々木政茂JAL旅客販売統括本部企画部長、黒田英朗JR東日本総合企画本部観光戦略室長