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航空自衛隊パイロットへの第1歩
“情報過多”となりゆくコクピットで求められるものとは
航空自衛隊で運用する航空機は多岐にわたる。戦闘機だけでもF-15、F-2、F-4の3機種に、新たにF-35も加わった。輸送機もC-130からC-1、C-2とあり、そのほか救難機や練習機等、多数の航空機を、―従来のアナログ計器からデジタル計器の最新型機までを―運用している。これら航空機を操縦する、ウイングマークを付けたパイロットになるために、必ず通るのが初等練習機での操縦訓練だ。今回本紙は第11飛行教育団司令兼静浜基地司令の西野一行1等空佐にインタビューを行い、航空自衛隊のパイロットに求められる資質やT-7初等練習機、そして次期初等練習機に求めるものについて語ってもらった。
―――学生教育におけるモットーは
ここ第11飛行教育団での教育については、初めて、航空自衛隊の航空機を操縦する学生が対象のため、学生にとって、わかりやすく、理解してもらえるような教育をするよう、教官たちには指導している。学生たちは自分が何を理解していないかがわからない部分も多々ある。学生が教官から教わった事柄について本当に理解しているかを留意して指導するよう教官たちに求めている。
―――学生たちはどのようなところがわからないのか
まずは航空機の操縦そのもの、感覚といったところだと思う。例えば、航空機はスピードが増すと当然揚力が増えるため、機首が上がる傾向にある。そのため少し機首を下げるようにしないと水平に飛ぶことが出来ないといった点が挙げられる。(飛行経験が)ある程度になると自然と体で覚えてくるものだが、最初はやはりわからない。このため、そのような点を丁寧に教えていくということを心掛けるように(教官たちには)指導している。
航空自衛隊のパイロットになるには
多くの課程を経て、各機種の部隊へ
―――飛行学生の大まかな飛行訓練環境はどのようになっているのか
パイロットになるためのコースとしては3つあり、防衛大学校を卒業した者、一般大学を経て一般幹部候補生試験(飛行要員)を受けて入隊した者及び航空学生を卒業した者がパイロット要員となる。それぞれ入隊後、防大卒と一般大学卒については、奈良にある航空自衛隊幹部候補生学校で一般幹部候補生課程を修了し、航空学生については、防府北基地の航空学生課程を修了した後に飛行操縦学生になる。この3つのコースの隊員たちが
初等練習機T-7の特性は
次期初等練習機に求めるもの
―――T-7練習機の初等練習機としての特性は
普通のセスナ等の単発プロペラ機は宙返り等の曲技飛行ができないものがほとんどだが、T-7では可能であるし、航空自衛隊の運用に必須である編隊飛行も行える。また計器飛行関連の訓練も可能なように必要な装置も装備している。このため、一通りのこと、操縦に関して航空自衛隊で将来的にこういう能力を付けてほしいというものが、
空自パイロットには「判断力」「胆力」が重要
―――航空自衛隊のパイロットに必要な「資質」とは、また心構えとは
まずは「判断力」、これは大事なのではないかと考えている。民航機にしても自衛隊機にしても、不測事態等は起きるものだが、そうした場合に何をどうするかといった的確な判断ができるような資質があればと思う。民航機と違い、自衛隊のパイロットは
他航空従事者との連絡調整を実施
安全な訓練環境を構築する
―――静岡空港も利用量が増え、トラフィックが増大している状況での訓練空域へ向かうための静岡空港との取り決めや課題、工夫等についてはどのように行っているか
まず静浜基地、国土交通省(航空局)、静岡空港との間で運用に関しての取り決めを行っている。これについては定期的な見直し等
※写真=西野一行第11飛行教育団兼静浜基地司令。“情報過多”になっていくコクピットでは「判断力」が求められる要素になると語った
※写真=静浜基地の第11飛行教育団ではT-7練習機を使用して初級操縦課程の教育を航空自衛隊パイロット要員に対し、行っている
※写真=デブリーフィングの様子
※写真=1980年から現在までの学生ワッペン。ワッペンは各課程毎に作るとのことで、多くの航空自衛隊パイロットがここを卒業していったことを窺い知ることができる
※写真=静浜基地の整備の様子