ウイングトラベル
日本旅行と京急電鉄提携、旅行事業を拡大へ
訪日・国内で三浦半島誘客、海外旅行も協力
日本旅行と京浜急行電鉄(京急電鉄)は5月16日に都内で会見し、京急観光の旅行事業を日本旅行に譲渡したことによる両社の旅行事業の包括的事業連携について詳細を発表した。訪日旅行事業で三浦半島への誘客、国内旅行事業で京急沿線と日本日本エリアへの相互送客、海外旅行事業で神奈川県内からの市場拡大などを協力して展開する。
京急観光の神奈川県内6店舗と外販の日本旅行への事業譲渡は3月1日からスタート、京急観光から63名のスタッフを迎えた。堀坂社長によると、既に2カ月間で、京急観光当時比の15%増の販売高を上げている。原田社長は今後時期を見て、京急観光を清算することを明らかにした。
堀坂社長、訪日・国内・海外で有力な市場
京急沿線と西日本エリアの相互交流を拡大
堀坂社長は、京急電鉄と連携した旅行事業への取り組みについて、「日本旅行は中期経営計画の『Value Up2020』の中で、地域の魅力を磨き上げて幅広く発信する『地域の価値向上』を掲げており、京急電鉄との連携による京急線沿線への誘客への取組みはまさにその具体化となる」と述べた。
「三浦半島は東京、横浜の大都市などから近い距離にあり、マグロで知られた三崎、葉山マリーナのマリンレジャー、横須賀で開催されたウインドサーフィンW杯などのスポーツイベントと様々な魅力に溢れ、大きなポテンシャルのあるエリア。また、横浜は充実したMICE関連施設を有するなど、さらなる誘客拡大がセットで可能なエリア」とし、横浜、三浦半島の魅力を語った。
また、堀坂社長は品川・川崎エリアについても触れ、「京急電鉄は全国各地、世界各国のゲートウェイとなる羽田空港へ乗り入れ、積極的に観光施策を展開している。羽田空港は全国各地からの日本人客はもとより、訪日インバウンド客が海外から羽田空港への直行便に加えて、札幌、福岡、沖縄など日本の国内を代表する空港を回遊するニーズの出入り口として極めて重要な役割を果たしている」と、国内・訪日旅行の誘客の可能性を指摘し、羽田空港の利用拡大を強化する意向を示した。
こうした京急線沿線への誘客の取り組み強化に加えて、「日本旅行はJR西日本グループの一員として、京急沿線から北陸、瀬戸内をはじめとする西日本エリアへの送客拡大を一層強化する」と述べた。
「JR西日本は「中期経営計画2022」で、西日本各エリアの活性化を事業戦略の一つに置き、日本旅行として品川発瀬戸内方面の新幹線利用、あるいは羽田空港発の関西空港着のインバウンドはじめ誘導の拡大に積極的に取り組んでいきたい」と述べ、京急線沿線と西日本エリアの相互交流の拡大と両エリアの活性化に貢献する方針を示した。
日本旅行の海外ネットワーク活かす事業展開
日旅主催の台湾「日本観光・物産博」に共同出展
日本旅行と京急電鉄の旅行事業連携の基本的考え方は、両社のグループの包括的な事業連携を推進し、京急線沿線の交流人口を増加し、活性化と沿線価値を向上する。また、京急電鉄グループと日本旅行グループの価値を向上し、「WIN-WIN」の関係で推進することとしている。
具体的な取り組みとして、まず日本旅行の海外ネットワークを活用した販売促進は、全世界50カ国・700社のエージェント網を活用して、日本旅行が三浦半島の観光素材、京急電鉄の企画乗車券などの販売プロモーションを強化する。
その皮切りとして、日本旅行が今年6月22日から24日に台湾・台北駅で開催する「日本の観光物産博2018で、日本旅行ブースに京急電鉄が共同で出展し、三浦半島エリアの観光案内をはじめ、エリアの魅力の発信に取り組むとともに、京急電鉄の企画乗車券、「みさきまぐろきっぷ」、「葉山女子旅きっぷ」を販売する。
この「日本観光・物産博」は2013年の初回から今回で6回目。2017年も来場者12万人を超える一大イベントに成長。京急電鉄は2015年2月に台湾鉄道管理局と有効鉄道協定を結び、本年3月に台湾観光局から2018台湾観光貢献賞を受賞した。
堀坂社長によると、その後は東南アジアをはじめ、台湾以外でも両社連携のプロモーション展開を順次推進する計画。
京急沿線と西日本エリアの相互送客は、京急線線の観光素材を磨き上げ、日本旅行の国内企画商品として新たなツアー等を造成し、西日本エリアをはじめ全国から誘客する。また、京急線沿線で西日本エリアの魅力を発信して送客につなげ、相互交流の拡大を図る。
具体的には、昨年から「東京・横浜&鎌倉・三浦半島コレクション」を赤い風船で展開。また、観音崎京急ホテル、城ヶ島京急ホテルなど京急ホテルと連携を強化。下期商品からは着地商品の展開を新たに開始し、農業、漁業などの地元産業の新たな体験型商品の造成・販売に取り組む。
また、京急線沿線発は関東各地行のバスツアーを京急観光商品を引き継いだ「赤い風船ナイスツアー」を3月より順次開始した。さらに、瀬戸内、北陸等の西日本エリア、とくに売れ筋の山陽商品を中心とした商品の販促宣伝を強化して、京急線沿線と西日本エリアの相互送客を図る。加えて、羽田空港からの誘客拡大を一層推進し、京急線沿線の活性化を図る。
三浦半島の農水産物を海外ブランディング
訪日インフォメーションセンターの連携も
京急電鉄と日本旅行が連携した地域創生は、地元自治体の協力で、三浦半島を中心に地域の観光資源の発信や地域の誘客に取り組む。三浦半島はマリンスポーツ、サイクリング、乗馬等の観光資源が豊富にあり、地元の素材を活かして体験型のツアーの造成、販売から長期滞在、移住などの新た提案、三浦の野菜など地域の特産品の海外ブランディングも検討する。
日本旅行は長野県飯山市で「NTA Farm」を展開し、訪日旅行者にリンゴをはじめ果物、野菜を提供、来年からはリンゴの海外輸出に着手する。三浦半島でも同様の可能性が期待される。
スポーツイベント、MICEの誘致・誘客は、三浦マラソン、ウイングサーフィンW杯などの既存イベントの情報を日本旅行の国内外ネットワークに配信することに加えて、国内外の企業・団体へのスポーツイベントの実施を提案し、誘客拡大を図る。また、横浜等でのMICEにも三浦半島と連携して積極的な誘客を推進する。
訪日外国人向けサービス・コンテンツの充実は、京急電鉄はインバウンド対応で、現在、羽田国際線ターミナル駅と品川駅で、京急ツーリストインフォメーションセンターを展開しており、とくに羽田空港の同センターは日本政府観光局(JNTO)のビジット・ジャパン案内所のカテゴリー3の認定を受けている。日本旅行は現在、京急電鉄の同センターと旅行予約システムで連携しているが、今後は大阪駅、京都駅、関西空港駅で展開しているTICをはじめ西日本エリア駅内店舗での着地型商品、当日宿泊などのインバウンド向けサービス・コンテンツを提案し、京急電鉄と日本旅行の相互間の情報発信によるサービスを提案しく方針。
堀坂社長「販売高増加、首都圏に拠点得る」
原田社長「沿線活性化のための事業譲渡」
堀坂社長は京急観光の旅行事業譲渡で「企画商品の拡充、JR券の販売も可能になり、販売高は3月からの2カ月間で、京急観光時代と比べて115%になった」と延べ、首都圏の神奈川県エリアのマーケットの大きさを指摘した。
また、京急電鉄との提携で、「インバウンドは羽田ゲートウェイから品川、三浦半島に誘客できるポテンシャルを持っている。関西空港から沿線私鉄の誘客と比べても、羽だから東京への人が多く、羽田から三浦半島への誘客はインバウンドで期待できる」と見通した。
アウトバウンドも「店頭、法人営業は神奈川県エリアという大きな首都圏マーケット沿線に拠点を得たことは、ポテンシャルとして期待できる」として、京急グループと連携して販売拡大に努めることを強調した。
原田社長は、日本旅行との提携で「品川、羽田をゲートウェイに三浦半島への送客し、沿線の交流人口の増加、価値向上を図りたい。西日本を基盤とする日本旅行の日本全国、海外ネットワークに期待したい」と述べた。
原田社長は京急観光の清算について、「沿線を活性化するための観光への取り組みは我々の事業の最大の使命。沿線人口が減少している中で、それを補う交流人口を増やすためには、日本旅行のネットワークにお願いすることが効率よく、成果も出る」と述べた。
※写真=京急観光の事業譲渡により旅行事業で包括的に連携する日本旅行の堀坂明弘社長(右)京急電鉄の原田一之社長