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2019.09.30

WING

陸幕、AH-64D墜落事故の調査結果を発表

アウトボード・ボルト破断の原因は特定できず

 陸上幕僚監部は9月27日、昨年2月に発生した戦闘ヘリコプターAH-64Dの墜落事故の調査結果を発表した。この事故は、2018年2月5日16:43時頃に陸上自衛隊目達原駐屯地に所属する第3対戦車ヘリコプター隊のAH-64Dが、目達原駐屯地の南西約6キロ地点に墜落。事故機に搭乗していた隊員2名が殉職したほか、地元住民と家屋にも被害が生じている。
 陸幕は事故の原因を、メイン・ローター・ヘッドとメイン・ローター・ブレードを繋ぐアウトボード・ボルトに亀裂が生じ破断したためと説明。このため、ストラップ・パックが破断して、メイン・ローター・ブレードがメイン・ローター・ヘッドから分離し、機体は揚力を失い墜落したと結論した。
 ボルトが破断したメカニズムとしては特定が出来なかったため、メイン・ローター・ヘッドの保管中に塗られていた腐食防止剤が劣化し構成品同士が固着した結果、アウトボード・ボルトに摩擦が発生して破断した可能性と、メイン・ローター・ヘッドを事故機に搭載する前に、何らかの理由からアウトボード・ボルトに亀裂が発生して、破断に至ったとする可能性の2種を提示した。
 このため、再発防止策としては破断に至ったいずれのメカニズムにも対応できる様、点検要領の見直しや保管要領の見直しを行うこととした。具体的な点検要領の見直しとしては、メイン・ローター・ヘッド搭載前に、構成品の動作確認を行い、固着がないことを確認するほか、アウトボード・ボルトに亀裂等の異常がないか超音波等による非破壊検査で点検する。また、搭載前のメイン・ローター・ヘッドの保管要領を、これまでの木製コンテナでの保管から気密性の高い金属製のコンテナでの保管に切り替え、外部から内部の湿度確認を行えるようにするとのことだ。
 事故調査に当たっては、陸上幕僚副長を長とする航空事故調査委員会を事故発生当日に設置し、民間の航空工学等の有識者が参加して調査。飛散した部品の破損状況の調査、メンテナンス・データ・レコーダー(MDR)の解析、関係者からの聞き取りを行ったほか、関係企業、米陸軍、第三者機関への意見聴取等も行ったという。
 なお、AH-64Dの飛行再開時期について陸幕に聞くと、「まだ未定」と述べて、今後は飛行再開へ向けて再発防止策の徹底、飛行要員の教育、地元への説明等を行っていくと説明した。

 

※写真=事故の原因はメイン・ローター・ヘッドとメイン・ローター・ブレードを繋ぐアウトボード・ボルトが破断したためと結論した(2011年総火演で撮影)

※写真=再発防止策の徹底、飛行要員の教育、地元への説明等の課題が多く、飛行再開時期はまだ未定だ(2011年総火演で撮影)