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2019.10.31

WING

19年度上半期緊急発進、過去5番目の470回に

回数減少も3回の領空侵犯、中・露連動の事例も

 統合幕僚監部が10月30日に発表した2019年度上半期(2019年4月1日~9月30日)のスクランブル(緊急発進)実施状況によると、前年度比91回減少となった470回だった。発進回数は前年度同期と比べて大幅に減少したかたちとなったが、四半期ごとに公表するようになった2009(平成21)年度以降としては、過去5番目の回数となった。しかし発進回数こそ減ったものの、領空侵犯事案については6月20日に発生した2回と、7月23日の計3回。中国、ロシアとも引き続き、日本周辺で活発な活動を続けている。
 今年上半期に航空自衛隊が行った緊急発進470回の内訳は、約71%が中国機で、29%がロシア機だ。いずれも、推定含め特に戦闘機に対する発進が多かった。中国機に対する緊急発進は前年度同期よりも13回減少した332回、ロシア機に対しては76回減少の135回と、どちらも去年より回数減となった。しかし上半期としては、中国機への緊急発進は過去3番目(16年度407回、18年度345回)の数であり、領空侵犯の3件はいずれもロシア機によるもの。いぜん日本周辺では緊張した状況であることに変わりがないといった見解だ。

 

対馬海峡の通過増加、中国機も日本海へ進出

 

 海峡を通過するような特異な飛行については、上半期だけで統幕から8回の公表を行った。領空侵犯事案を除いた公表事案うち、沖縄本島と宮古島間を通過した事案は4回で、いずれも中国機によるもの。対馬海峡を通過した事案は中国機1回、ロシア機3回となった。
 このところ中国機は、沖縄-宮古島間を通過する太平洋への進出をはじめとして、長距離のミッションを活発に行っている。さらに最近は、対馬海峡の通過によって日本海と東シナ海を移動する事案も増えていて、確実に行動範囲を広げている状況だ。
 ロシア機も日本海だけでなく、本州を1周する周回飛行を引き続き行っている。2回の領空侵犯が発生した6月20日は、まさにのTu-95爆撃機2機が周回飛行を行っている最中に南大東島および八丈島領空内を侵犯した。さらに、7月23日のA-50による竹島の領空侵犯は、中国H-6とロシアTu-95がそれぞれ連動した飛行を行うことで発生した。中国空軍機とロシア空軍機が連携を取るといった、これまでに見ない状況が発生するかたちとなった。

 

対馬通過事案増え西空の緊急発進27回増加

 

■6月に露爆撃機が2回領空通過
7月は中露連携で竹島上空を領空侵犯

 

※図1=2019年度上半期の中国軍機およびロシア軍機の活動状況(提供:統合幕僚監部)

※写真・図1=6月20日に領空侵犯したロシアTu-95と飛行ルート。南大東島では2機が侵入し、八丈島では1機が侵入した(提供:防衛省)

※写真・図2=7月23日に竹島上空を領空侵犯したロシアA-50と飛行ルート(提供:統合幕僚監部)

※写真・図3=7月23日はA-50とは別のロシア・中国機が連動した。左上がTU-95、左下が中国のH-6(提供:統合幕僚監部)