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2019.11.12

WING

防衛装備庁、将来戦闘機関連研究で着実な進捗

僚機間データリンク、試作素子で目標上回る出力

 防衛装備庁は11月12・13日に開く「技術シンポジウム2019」で、注目の研究開発の成果を公表する。将来戦闘機関連研究については、ステルス性およびネットワーク戦闘能力などに優れた将来戦闘機の実現に向けた各種研究を展示。戦闘機用統合化機管制技術の研究や、ステルス化技術の研究などを展示して、将来戦闘機の開発に必要な技術の進展を示す。
 将来戦闘機コンセプトとして示す能力は、「クラウド・シューティング」、「敵を凌駕するステルス」、「ハイパワー・スリムエンジン」の3点を挙げる。そのうちクラウド・シューティング技術は、従来の戦い方を大きく変化させるゲームチェンジャーとして期待される。これまでの“個”の戦いを“チーム”での戦いに変える。編隊が敵を検知し、攻撃可能な編隊の誰かが撃って攻撃する。数的劣勢下で効果を発揮するとされる。これを実現するため、戦闘機各機が持つセンサ情報やウエポン情報を僚機間で情報共有し、それらを統合火器管制システムが管制する。
 統合火器管制システムの設計には、統合火器管制処理装置、僚機間秘匿データリンク装置が必要となる。これまでソフトウェアの試作シミュレーション試験によって、同システムの有効性を評価してきた。実際の航空機を用いた飛行試験では、実環境下での性能の確認を行っているところ。
 僚機間秘匿データリンクの研究では、秘匿性と確実に伝達する性能を備えたデータリンクを目指す。これには、探知されにくいミリ波を使用するが、小型高出力で広覆域のミリ波空中線を発する小型高出力素子の新規開発を行う。この地上試験では、SiGe素子を用いた空中線を試作したとして、試験結果は設計目標を上回る送信出力を確認した。さらに地上試験では、試作空中線とビーム制御技術の統合を行うとして、実環境下で性能を検証する飛行試験を行う。
 ステルス技術の研究では、ウエポンリリース・ステルス化の研究や、ステルス・インテークダクトの研究などが進められている。中でもウエポンリリースに関する研究では、試作した実台のウエポン内装システムを使って、誘導弾の分離に関する一連の動作が短時間で実施できることを確認した。供試体は左舷側のみ試作。高さ、幅、奥行きとも6メートルを超えるサイズで、ウエポンベイ扉、開閉機構、ランチャーなどが備わっている。
 インテークダクトの研究は、高いステルス性と、エンジン前面の空力的な特性改善の両立を目指す。ステルス性を確保しようとすれば、空気が流れるダクト内を大きく曲げることになるが、空力性能と相反してしまう。インテークダクトの設計については、インテーク部や曲がり部で、積極的に流れの制御を行い、流入空気のバイパスを設けるなどで、相反する性能の両立を推進する。また曲がり部には微少なベーンを取り付けることで、流れの剥離を抑制し、空力特性改善に寄与することが分かった。
 戦闘機用エンジンシステムに関する研究では、2018年6月にプロトタイプXF9-1を試作して、地上性能試験を実施している。この試験では、目標性能としていた最大推力15トンの達成をすでに確認しているところ。順調に試験が進捗しているとした。

 

海洋環境試験評価サテライト、21年度運用開始へ

 

次世代水陸両用車開発、シミュレーションで効率化

 

2日にわたり技術シンポジウム2019開催

 

 防衛装備庁は、都内ホテルで研究開発の取り組みなど講演・展示する「技術シンポジウム2019」を開催する。今回のシンポジウムでは、同庁が発表した「研究開発ビジョン」に基づく宇宙・サイバー・電磁波の新領域について、必要な研究開発の方向性を示すとともに、従来領域の陸・海・空で必要な研究開発の成果を紹介する。さらに大きなテーマとして「オープンイノベーション」を取り上げる。

 

※写真1=将来戦闘機関連研究で作成したウエポンリリースの風洞試験模型

※写真2=インテークダクトの風洞試験模型

※写真3=次世代水陸両用車の研究開発で用いるシミュレータ映像