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2018.06.01

WING

PDエアロ、第三者割当増資で無人宇宙機開発を加速

X05〜07号機開発、19年度秋以降に高度100キロへ

 

 完全再使用型宇宙機を使った弾道飛行による”宇宙旅行”事業の展開を目指すPDエアロスペースはこのほど、計5社を引受先とする第三者割当増資により、シリーズA資金調達ラウンドにおいて、総額5.2億円の資金調達に成功したことを発表した。PDエアロスペースは調達した資金を用いて、来年秋以降にも無人宇宙機を高度100キロメートルに到達させ、再び地上に着陸させるための新型エンジンおよび機体開発に本格着手する。さらに、開発拠点の拡張および体制強化を行う方針だ。なお、増資引受先は既存株主であるANAホールディングス、エイチ・アイ・エスからの増資に加え、新たにハウステンボス、みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合(運営:みずほキャピタル)、オプティマ・ベンチャーズからの資金調達に成功した。
 PDエアロスペースでは段階的に3種類の実験機を製作し、機体特性、飛行制御、ジェット・ロケット切替機能、エンジン性能などを確認する。飛行試験において、高度と速度を徐々に上げていく計画だ。同時に、国内での実験および事業環境を整備するために、「国内宇宙港」設置のフィジビリティスタディを行っていく方針だ。

 

 X05-07号機で段階的に飛行実証
 PDE実用化向け5気筒エンジン開発

 

 新たに開発する機体はX05号機、X06号機、そしてX07号機。いずれも無人飛行実験機で、X05号機は2メートル級の機体で電動モータファンを搭載して飛行特性を確認する。X06は4メートル級の機体を開発して音速試験用としてジェットエンジンを2基搭載し、さらにパルス・デトネーション・エンジンを2基搭載する。そしてX07号機は全長8メートル、全備重量3.5トン、パルス・デトネーションエンジン2基搭載することを計画しており、この機体で高度100キロメートル到達することを目指す。
 一方、PDエアロスペースのキ-技術であるパルス・デトネーション・エンジンについては、「実用化に向けた開発を進めている」とのこと。これまでは単気筒だったが、実用化に向けて「5気筒のパルス・デトネーション・エンジンを開発する」ことに踏み切るという。「現在の設計では、この5気筒のパルス・デトネーション・エンジンで、高度100キロメートルに到達することができる」としている。
 また新しい開発拠点については、現在と同じ碧南市内で既に移転を開始しており、今月中旬にも移転を完了する。敷地面積を現行の8倍の面積を確保することで、各開発ブースを大きくする。加えて、新たに15名の新規雇用することで現行の4名体制を19名に増強した。

 

 まだまだ実現向けたハードルは高い

 

 昨年、世界で初めて、単一エンジンでジェット-ロケット燃焼モード切り替え運転試験に成功したことで、成功への糸口を掴んだPDエアロスペース。今回5.2億円の増資に成功したとはいえ、PDエアロスペースが目指す2023年に有人の商業飛行開始という大きな目標には、資金的にも、時間的にも、まだまだ高いハードルが聳え立つ。
 肝心のパルス・デトネーション・エンジンにしても、これから実用化に向けた5気筒の新型エンジン長時間の連続運転試験で耐久性や安全性を立証していかなければならないことはもちろん、機体・エンジンの型式証明も必要にあるであろうことからも、時間軸的には限りなく「赤信号」に近い「黄色信号」なのではないだろうか。とはいえ、日本初の宇宙旅行向けの有人宇宙機開発というビッグプロジェクト。多くの人びとの夢なども背負ったプロジェクトに成長しているだけに、開発を急ぎながらも時間軸に縛られすぎずに、是が非でも成功させて欲しいものだ。
 なお、PDエアロスペースでは引き続きシリーズA資金調達ラウンドを展開していくとしており、出資に加え、ふるさと納税(ふるさと起業家支援制度、クラウドファンディング型)、スポンサーによる協賛など、複合的な資金調達を行っていく。また、JAXA、大学、企業、自治体(愛知県、碧南市、名古屋市)などと共同研究、協業体制を構築・強化し、技術開 発と並行して、事業化の検討を積極的に行っていきたい考え。

 

※画像=2019年度にも(提供:PDエアロスペース)