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三菱航空機、M100ローンチに課題も
ベラミーCDO、「サプライヤーの説得必要」
スペースジェットを開発中の三菱航空機の水谷久和社長、アレックス・ベラミー最高開発責任者(CDO)、そしてデイビッド・バロー海外営業部長が12月20日、名古屋市内で記者会見に臨んだ。このなかでベラミーCDOは、未だローンチすることができていない65席~88席級のM100型機について、「サプライヤーが我々のプログラムに参加するように説得しなければならない」と話した。「(M90の開発に)時間がかかっている現状を鑑みると、(サプライヤーが)新規プログラムに参加しやすいかといえば、今のままでは難しい」とし、本来、本命であるはずのM100のローンチには、サプライヤー問題をクリアにすることが必要との見方を示した。この問題をクリアするために三石航空機としては、M90の開発・型式証明取得プロセスを前進させていくことはもちろん、受注数を増やすことによって、サプライヤーに確実に仕事があるということを、証明していかなくてはならない。
三菱航空機が打ち出したM100型機は、世界のリージョナルジェットの主戦場である米国のスコープクローズに対応する機体だ。そもそもこのスコープクローズとは、航空会社とパイロット組合の労働協約の一つで、リージョナルジェットに対する制限として、座席数は最大76席、最大離陸重量が39トン(8万6000ポンド)という制限を設けたもの。かつてのMRJおよびライバルであるエンブラエルのE2は、このスコープクローズという障壁に阻まれ、主戦場である北米市場の取り込みができていない。そこで三菱航空機はリブランドしたスペースジェット構想を打ち出し、スコープクローズに抵触しないM100型機を市場に提案することで、北米市場を取り込もうとしている。
三菱航空機としては、型式証明を取得してローンチカスタマーである90席級のM90の開発作業をまずは最優先事項として取り組まなければならないことはもちろんのことだが、マーケット規模としてはM100型機が本命だ。
ベラミーCDOは「(M100の)設計、技術的な内容検討を進めており、お客様からもフリートに加えたい、製品が欲しいという声も来ている」とコメントし、M100の受注獲得に自信をみせた。
そうしたなかライバルであるエンブラエルがE2ファミリー最小となるE175-E2の初飛行を実施しており、M100型機のライバルとなる機体開発を前進させた。
ただ、このE175-E2はスコープクローズにおける最大離陸重量の制約をオーバーする機体設計となっており、このままではスコープクローズに抵触。北米のエアラインとしては導入することが難しい設計となっており、スペースジェットのM100に優位性がある。
水谷社長もE175-E2について、「北米のスコープクローズでは制約を受けるもので、我々のM100が具体化すればスコープクローズに対応するものであり、驚くような変化はない」として、M100型機の北米市場における優位性を強調。バロー海外営業部長も「我々のマーケットにおいて最大となる地域は北米だ。北米で通用する機体かどうかということを踏まえる必要がある」とコメント。「スペースジェットの顧客としては、(M100型機が)とてもエキサイティングということには変わらない」との認識を示し、E175-E2を牽制する。
一方、エンブラエル側としては、・・・
2017年以降、900件超もの設計改良を実施
TC取得向け約半数の8テストブロックで飛行試験
型式証明取得向けた最終形態10号機は今
10号機は飛行試験向け機能試験中
バロー海外営業部長、20年間で5137機
「我々の取り組み正しいと確証」
※写真=市場の大本命であるM100は無事にローンチすることができるのか。M100ローンチはスペースジェット構想の命運を握るがその動向や如何に。三菱航空機はサプライヤー達を説得しなければならない。左からベラミーCDO、水谷社長、バロー海外営業部長
※写真=型式証明取得に向けて900以上の改良を施したスペースジェット。型式証明を取得するための最終形態である10号機の改修は概ね完了し機能試験中だ