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川崎重工業、航空エンジン増産に対応、ロボット、IoTの導入も拡大
エンジンメーカーとして、ギアなど関連分野含め発展
川崎重工業の航空エンジン事業は活況を呈している。Trent1000/XWB/7000の3機種で月産が40台を超えており、ロボットも細かい仕上げ作業で複数台が同時に稼働するなど、更なる増産に向けたロボットの採用が本格化している。生産管理システムでは、タブレット端末を使用した細かい作業指示とフィードバック、工作機械の作動状況のモニター、管理などにより製造の円滑化が進められている。ギアシステム、燃焼器についても民需出荷が始まっており、総合エンジンシステムメーカーとしての存在を国際的に高めつつある。
航空エンジン部門のトップ(航空宇宙システムカンパニーバイスプレジデント[エンジン事業担当])を務める植竹芳裕執行役員は、「自社エンジンを飛ばす夢に向けて自社技術を育て、モジュール組立、ギアシステム、燃焼器など機能部品が事業の柱に育ってきた。KJ14に始まる小型ジェットエンジンはKJ100、更にターボファンに発展しつつある。エンジン全体を担当するメーカーだということを強調したい」と語る。
電動化など将来の航空機推進技術の研究も動き出す世の中の兆候はあるものの、植竹氏は「ジェットエンジンは当面なくならない。更に燃費を高め、CO2とNOxの排出を減らすことに注力していく考えだ」と述べた。
民間航空エンジン空前の大量生産に対応
昨年A320ceo向けV2500の量産最終エンジンを納入した。ただしエンブラエルKC-390軍用給油・輸送機向けの納入は継続しており、V2500の納入累計はKC-390向け約10台を含め約7700台となった。
A320neo向けのPW1100G-JMエンジンの生産は2015年より右肩上がりに伸長している。川崎重工業では設備投資やサプライヤーの育成、Make/Buy戦略の適正化を行い、急激なエンジン増産に対応している。エアバス社は2021年にはA320neoの機体生産レートが月産63機に到達すると公表しており、川崎重工業は引き続き必要なキャパシティを確保していく方針という。
また787向けTrent1000-TENは2017年に商業運航開始以降、納入は順調に継続しているという。2020年度は現在のTrent1000エンジン改修によるAOG状態(部品が間に合わず飛行できない機材の発生)を改善、解消するためのスペアエンジンも含めて月産12台程度で推移する見込みだとしている。
検査、設計変更部品への交換はブレード部分であり、川崎重工業の直接担当部分ではないものの、RRSP方式での事業のため、改修費用の分担が発生している。植竹バイスプレジデントは「AOGを解消すべくロールス・ロイスに協力して、なるべく早期に完了したい。最大限の努力をしている」と語る。
〈サプライヤーの育成〉
〈PW1100G-JMのMRO事業〉
将来戦闘機エンジン国内開発に貢献要望
オスプレイのエンジン維持整備でロールスと契約へ
〈将来戦闘機エンジン〉
〈KJ100エンジン〉
〈オスプレイのエンジン整備基盤構築〉
〈包括維持整備契約、エンジン改修〉
PW1500GのFDGS量産体制を構築
トランスミッション、ギアボックスも好調
〈PW1500GのFDGS〉
〈既存製品〉
仕上げ工程にロボット導入本格化
製造管理、生産管理にIoT導入も実施段階
《ロボット導入、IoTの整備》
〈T-IDG〉
※写真=川崎重工業航空宇宙システムカンパニーバイスプレジデント[エンジン事業担当])を務める植竹芳裕執行役員