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IATA、米の欧州からの入国停止措置で各国に緊急要請
12兆円損失の最悪超える超最悪シナリオに突き進む世界
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて3月12日(米国時間)、米国のトランプ大統領が英国を除く欧州から米国への渡航を30日間に亘って大幅に制限する措置に踏み切ったことで、航空業界は恐怖におののいている。国際航空運送協会(IATA)は米国の動きに素早く反応し、同日(ジュネーブ現地時間)、各国政府に対して航空会社に対する財務的な支援の必要性を訴えるなど、緊急要請を行った。具体的には(1)広範な経済的な影響に備えつつ、(2)航空会社の財政基盤が脆弱化していることに迅速に対応すること、そして各国政府が講じている渡航制限に関して(3)世界保健機関(WHO)の推奨ガイダンスに従うことを要請した。
遡ること去る3月5日、IATAは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要と路線ネットワークの縮減に伴って、2020年の航空業界は最大約1130億ドル(約12兆円)規模もの収益悪化が見込まれるとの予測を示した。ただ、IATAが3月5日の時点で予測した「最悪」シナリオよりも、実は現状でさらに悪い「超最悪」のシナリオへと世界は向かっているのかもしれない。
それというのも、3月5日時点のIATAが描いた「最悪」のシナリオには、米国が今回発動した欧州からの渡航停止措置や、イスラエル、クウェート、スペインなどといった各国政府が導入した厳しい措置は当時のシナリオに盛り込まれていなかったためだ。
IATAによれば、昨年、米国-欧州(シェンゲン協定域)を繋ぐ大西洋路線は実に20万便が運航され、1日当たりに換算すると約550便に相当。旅客数も年間約4600万人、1日当たり12万5000人が利用していた計算となる。
2019年の米国とシェンゲン協定各国を結ぶ路線の市場は約206億ドル(約2兆1600億円)あって、なかでも米国-ドイツ間は40億ドル(約4200億円)、米国-フランス間が35億ドル(約3670億円)、そして米国-イタリア間では29億ドル(約3040億円)の市場規模があった。
トランプ大統領が大鉈を振るった欧州から米国への入国停止措置は、これだけ膨大な人流、航空貨物、ひいては経済活動に影響を及ぼすことは想像に難くない。
航空会社は新型コロナウイルスの感染拡大で深刻なまでの打撃を既に被っているが、米国が講じた欧州からの入国停止措置についてIATAは、航空会社に対する財政的な圧力さらに高めるものだとして一層危機感を募らせた。
ジュニアックCEO、「これは異常事態だ」
各国政府の支援措置が不可欠
※写真=米国による欧州からの渡航制限措置にIATAは危機感を募らせる。各国政府に対して緊急要請を行った(提供:国立感染症研究所)