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2018.07.03

WING

「空飛ぶクルマ」は日本に根付くか?

欧米型の都市モビリティとしては当初疑問符も

 

 日本を含め世界各地で開発が進められている「空飛ぶクルマ」。このあらたなアーバン・モビリティとして期待がかかる新たなツールは、日本国内では一部エンジニアの有志団体からスタートした試みだったものの、経済産業省などを中心に政府はもとより、国内産業界からの注目を広く集めるようになった。既に経済産業省は今年3月の産業構造審議会で、その実用化に向けた検討をスタートすることを表明。2020年代の実用化に向けた技術開発や工程表づくり、環境整備などに取り組む方針を示している。欧米を中心に開発が加速している「空飛ぶクルマ」が、日本国内でも新しいアーバン・モビリティとして整備されていけば、満員電車や渋滞で悩む日々から解放されることに繋がるかもしれない。
そうしたなか三菱総合研究所科学・安全事業部でドローンなどで、ドローン目視外及び第三者上空などの飛行に関する検討や、ドローンの運行管理システムの研究開発などに携わっている大木孝主任研究員は、「欧米で検討されているような都市モビリティのために作られている。それをそのまま日本に当てはめたとしても、利用は進まないのではないだろうか」との持論を展開した。
 諸外国における「空飛ぶクルマ」開発の動きは激しい。そもそも欧米や中東などで発生したニーズとしては、都市の渋滞が激しく、郊外からの通勤などに支障を来していることから、「空飛ぶクルマ」を開発することで渋滞解消の一助とすることのほか、高速で飛行することで通勤・通学のストレスから解放することなどが開発の狙いだ。
 早ければ2020年代初頭から半ばにかけて、続々とサービスを開始するだろうと思われる。世界各地で開発が進められている「空飛ぶクルマ」は、すでにその一部が飛行を達成しており、ドバイやシンガポール、そして米国の一部都市などで開発が加速し、インフラとして活用されることが期待されているところ。とくにUberやエアバスといった大手企業が開発を進めていて、新たなアーバン・モビリティ・ツールとなっていくことが期待されている。
 大木主任研究員によれば、「日本は電車などの都市の公共交通網が整備されている。そのなかをわざわざ渋滞解消のために、大きな機体を飛ばすという方向性は、なかなか難しいのではないだろうか」との認識を示しつつ、「まずは災害時や、あるいはドクターヘリのような役割まで担うことはできないが、緊急時などにおいて使用されることが想定される」との考えだ。
 ちなみに日本国内では前述したように、トヨタや航空機関連メーカーに勤務する技術者たちが集まって、「空飛ぶクルマ」の開発を目指すCARTIVATORが発足しており、2020年東京オリンピック・パラリンピックを機会として、飛行させること目指しているところ。

 

ドローン物流の今後の方向性は?
コスト効率とオンデマンド配送ニーズ

 

 「空飛ぶクルマ」の開発が急がれている一方、すでに様々なシーンで活用が進んでいるドローンは、いよいよ本丸とも言える物流業界へと進出し始めた。空の産業革命ツールとして期待の高いドローンは、2015年12月の改正航空法では規制されていたものの、過疎地における目視外飛行が、いよいよ始まろうとしている。既に国土交通省は、その要件として、第三者の立入り管理のほか、有人機などの監視、自機の監視、そして自機周辺の気象状況の監視などといった要件を定めた。今後、飛行経路や空域管理、通信用電波、さらにはドローンポートなどのインフラ整備のほか、第三者上空飛行の制度整備などが進むことによって、人びとの社会生活のなかに、一層食い込んでいくことも想像に難くない。
 物流ドローンとしては既に日本国内で様々なところでトライアルが行われている。例えば、楽天ドローンとローソンがタッグを組んで、ローソンの移動販売車による販売と、ドローンによる商品配送を連携させた実証を東日本大震災の被災地で実施。揚げ物などの温度管理などの観点から移動販売車両では取り扱えない商品を対象に、注文を受けると、ローソンの店舗から車両までドローンにより商品を配送する試みを行った。この時、ドローンは主に河川上空を飛行した。
 こうした物流ドローンの今後の方向性について大木主任研究員は、「通常これまでは大型トラックで輸送していた物流は、過疎地域だと人もいなくて効率が悪いと言われていた。そこで現状、とくに過疎地域でドローンの活用が検討されているものは、通常の物流事業者ではコストペイしないところをドローンで無人化する」という、いわば従来の輸送手段に代わる”コスト効率型の輸送”があると指摘。
 さらに、「オンマンドの輸送、今欲しいなどのニーズに応えていくという方向性もあるだろう」との考えを明らかにした。
 「過疎地域でもオンデマンドニーズに応えようとしているが、レベル4で都市部で物流を展開するようになれば、都市部の要望はコスト効率というよりは、今欲しいという、都市の人たちのわがままな要求に応えるためにドローンを使うということが考えられる」とコメント。「タイムリーなオンデマンド・デリバリーという方向性もあるだろう」と、物流ドローンの発展の方向性として二つの方向性を示した。
 第三者上空飛行などの、物流ドローンが社会インフラとして成立していくためにはまだまだハードルがあるようだが、そもそも通信面の課題もあるという。
 現在、ドローンの目視外飛行には携帯電話網を活用する方向で検討が進められているが、「上空で飛ばしてみると、LTE電波が入らない事例も散見されている」と指摘。「携帯電話網は人のために整備されているので、過疎地域は人の少ないところとなり、LTE電波が入りにくいところもあるようだ」との見解を明らかにした。こうした課題は、業界の共通課題として、既に関係者間で認識されており、今後の課題解決に向けた検討が進められていくことになりそうだ。

 

※画像=日本国内ではCARTIVARTORが「空飛ぶクルマ」の開発を目指している(提供:CARTIVATOR)