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2020.08.31

WING

フィリピン空軍が三菱電機管制レーダー採用決定

初めて防衛装備品移転が実現、4基で1億ドル契約

 防衛省はこのほど、フィリピン国防省が8月25日に三菱電機製警戒管制レーダー4基の導入を決定したと発表した。この契約は約1億ドルで、同社が新たに固定式3基、移動式1基の開発・製造を行う。防衛省では、2014年4月の防衛装備移転三原則策定以降、防衛装備品移転に向けて取り組んできたが、完成装備品の輸出としては初めてのこと。防衛装備産業において明るい兆しが見えてきた。
 フィリピン国防省は、同国空軍で2018年から警戒管制レーダーの本格的な選定に着手した。その選定に対して三菱電機では自社製のレーダーを提案し、防衛省としても日本製レーダー採用に向けて活動してきたところ。2018年夏ごろにはフィリピン側が応募企業を絞る選定を行い、その後の協議・選考によって、2020年になって三菱電機1社に絞り込んだという。競合企業の詳細については明かされていないものの、米国、イスラエル、イタリア、フランスなど、レーダー関連メーカー各社が名を連ねる中で、契約を結ぶに至った。
 三菱電機の提案は、各社提案のあったレーダーの性能、価格のほか、パッケージサービスなど、複合的にフィリピン側の要求を最も満たしたものと見られる。この提案では、これまで実績のあった航空自衛隊の固定式警戒管制レーダーのJ/FPS-3と、陸上自衛隊の滞空レーダー装置JTPS-P14を開発・製造した経験を踏まえて、新たにフィリピン空軍向けに開発・製造を行うとした。さらに防衛省では、実際に部隊で稼動している施設について、フィリピン空軍のテクニカル・ワーキング・グループによる視察を受け入れて、海外移転の促進に努めた。
 また防衛省では、フィリピン側と装備協力について実績を重ねてきたことが、この度の契約の実現につながったといえる。2018年3月までには、海上自衛隊が練習機として使用していたTC-90を5機無償で譲渡した。さらに2019年9月までには、陸上自衛隊が保有していたUH-1Hの部品約4万点を無償譲渡した。日本にとってフィリピンは、共通の理念を持つ戦略的パートナーであり、これまで防衛協力を推進してきたことが、日本製の装備品調達のハードルを下げたと見られる。

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※写真2=フィリピン空軍のテクニカル・ワーキング・グループによる自衛隊運用状況の視察の様子(提供:フィリピン国防省)