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2020.09.16

WING

進むF-X開発研究、小型熱移送システム順調な進捗

VCS方式と従来方式併せて効率的な排熱に有効

 防衛省の次期戦闘機(F-X)開発は、今年度から初めて予算がつき、初期的な設計を行うことになっている。初期設計自体で計上した金額は111億円で、戦闘機システムの機能・性能の優先度と、設計上用いる企画や基準を検討する。さらにコンピュータシミュレーションによる最適な機体形状を検討することになる。今後、機体開発担当企業と防衛省によって検討が進められる。戦闘機の機能・性能に関する各種要素技術の研究は、防衛装備庁によって進められてきた。中でも特に採用が有力視される研究として挙げられるのが、「将来戦闘機用小型熱移送システムに関する研究」と「推力変更ノズルの研究」の2つだ。この2つの研究は、外部評価委員会の中間評価で、高い評価を得ていて、F-Xの高い性能を裏付けることになりそうだ。
 「将来戦闘機用小型熱移送システム」は、搭載するアビオニクスの性能向上に伴って、増大する発熱を効率的に排出する研究。液体の蒸発と気体の凝縮を活用したベーパー・サイクル・システム(VCS)方式を採用する。基本設計が終了した中間評価では、同研究が順調に進捗しているとして、基本設計の内容が妥当だと評価。今後の研究などにおいて、それまでに得た成果や委員会での指摘事項が活用されることを期待するとして、有効な研究であることを示した。
 研究開発の目標については、戦闘機で想定される要求を踏まえた設定となっているため、基本設計の段階で目標達成の見通しがあると評価した。
 将来的に考える必要がある課題としては、効率、質量、耐久性、耐環境性を挙げて、将来的な目標に加える必要があることを指摘した。また液体を蒸発させるエバポレータという装置について、内部の状態を確認するには、ほかの研究を参考にするよう促した。さらに試験の状況を確認する機会を設けた上で、関係者間による議論の機会を設けることが望ましい、といった評価もあった。
 戦闘機のGに対する影響については、設計ではGの影響を考慮しているものの、戦闘機運用の実態に即したかたちが求められるとして、過剰な要求とならないように配慮する必要があるとした。さらに液相コンプレッサへの液体の流入・逆流防止について考慮する必要性を指摘した。また機体へ搭載するまでの間に、開発中の設計検討や試験などでもGの影響を確認する必要があるとした。・・・

 

推力偏向ノズル研究、プロトエンジンと性能評価へ
全周20度の偏向、耐熱性高い国内素材使用も検討

 

※図=小型熱移送システムと推力偏向ノズルは、次期戦闘機にとって必要な技術であり、中間ながら高い評価を得た(提供:防衛装備庁)