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2018.07.13

WING

防衛省、豪雨災害で即応予備自衛官を招集

約300名を生活支援活動へ、招集は国内3例目

 

 防衛省はこのたびの豪雨災害を受けて、自衛隊の活動が長期化することが見込まれるとして、即応予備自衛官の招集を決定した。2011(平成23)年の東日本大震災、2016(平成28)年の熊本地震で行って以来、これで3回目となる。当面は、中部方面隷下へ登録している人を対象に約300名を招集して、主に被災者への生活支援活動を行う部隊へ配置する計画。小野寺五典防衛大臣は、7月11日の臨時会見で、「被災者の方々に寄り添ったきめ細やかな生活支援活動を全力で行っていきたい」と述べるとともに、行方不明者の救出について「警察・消防と協力して、現地でローラー作戦などを行って1日も早い救出に全力を尽くす」とした。
 即応予備自衛官に対する災害等招集命令は7月11日17時51分、自衛隊法に基づき内閣総理大臣の承認を受けて、防衛大臣が即応予備自衛官に対する災害等招集命令の実施と、受入れに関する行動命令を発出した。このたび即応予備自衛官の招集が必要となった理由について、小野寺大臣は災害の長期化が見込まれると説明した上で、特に現地で登録している即応予備自衛官が「日ごろ現地で生活をしている、地の利も明るい方々であるので、こういう方々に生活支援などの対応をしていただくことも重要かと思い、お願いをすることになった」と述べた。
 即応予備自衛官の活動は、特に被災が大きい広島の駐屯地を中心に所属することになるして、主に生活支援を行うことになると見られる。当面の規模として300名態勢での対応となるが、これは即応予備自衛官を招集した前回の熊本地震の際にも、同規模から始めたということで、状況に応じて追加の招集にも対応する構えだ。
 また防衛省・自衛隊では、それまで自治体に連絡員を派遣して、被災自治体と緊密な連携を図ってきたが、11日にはさらに被災者の生活支援を迅速・強力に進めるため、「防衛省災害対策現地連絡チーム」を発足した。このチームは、中部方面総監部幕僚副長の坂本雄一陸将補をヘッドとして、広島、岡山、愛媛、高知の4県へチーム員を常駐させる。それにより、現地での対応を一層強化させて、給水、入浴、食料品の輸送など各種支援において、それぞれのニーズに細やかな対応を行う。
 そのほか小野寺大臣は、大雨被害が発生した5日夜に自民党の懇親会へ参加したことについて、「発災当時もしっかり対応していると思う」と述べて、批判には当たらないことを強調した。当時防衛省では、各自治体に連絡員を派遣して情報収集を行い、大臣本人も5日夕方まで様々な情報を受けて、深夜未明の災害派遣要請にには対応するよう指示を行ったという。小野寺大臣によると、当日は「宿舎で待機をしていて、集会所で会合があるということで、顔を出して、あいさつをしたということ」だとして、続けて「連絡体制をしっかり取っていたし、特にこの問題に対して対応が遅れたなどはない」と語った。さらに翌6日朝には、中部方面総監部へ行き、災害の状況の確認、部隊への指示などを行った後、東京へ戻って災害対策本部に出席したことを説明した。

 

「おおすみ」横須賀から呉へ物資輸送

 

 豪雨災害の主な対応について、防衛省・自衛隊は11日、食料、飲料水、入浴支援セットなどを積載した輸送艦「おおすみ」が横須賀港を出港。呉市へ各種物品を運搬する。また、中部方面航空隊のCH-47が広島から呉へ、パン3万701食を空輸した。さらに、春日ヘリコプター空輸隊のCH-47が福岡・松山空港から避難所で使用するエアコン40個を広島および呉へ空輸した。
 さらに、広島のほか、高知、岡山、愛媛の4県では、これまで自衛隊が実施している入浴支援、給水支援などを継続して行っている。12日の活動として、航空自衛隊では中部航空方面隊第1高射群第2高射隊(武山分屯基地)が給水支援のため、海上保安庁の船舶から飲料水を被災地へ輸送した。第1輸送航空隊(小牧基地)では、被災者への生活支援のため、物資などを広島空港へ輸送した。
 また13日9時現在、入浴支援については、広島、岡山、愛媛の3県の自治体で実施し、延べ1万6670人が利用した。給水支援については、4県で4718.1トンを実施。さらに、人命救助・孤立者救助は2269名となった。給食支援は愛媛県宇和島市で約2000食を実施。物資輸送については、高知県香南市、香美市、安芸市、愛媛県大洲市、広島県呉市、三原市、岡山県倉敷市で、水約2900本、食料約5万7321食、燃料約125.6キロリットルの輸送を行った。そのほか、水防活動として京都府京都市、高知県安芸市で土嚢を約5200袋作成し、高知県宿毛市、大月町、愛媛県西予市、宇和島市、岡山県倉敷市で、約24万キロメートルの道路啓開を行った。

 

※写真=11日には、被災者への給水支援のため、C-2で給水車などを広島空港へ輸送した(提供:航空自衛隊)