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2020.12.15

WING

陸上転用の新イージス艦、コスト増大の可能性も

誰が使うのか、洋上前提のレーダー再選定必要

 防衛装備品は、誰が何のために使うのか――。これを忘れて議論を進めてはいけない。このほど、イージス・アショア導入中止によって検討されてきた代替案は、新たにイージス艦2隻を製造する方針として決まった。12月9日の加藤勝信官房長官の発言にもあるように、政府はすでに購入している構成品をそのまま転用して、新たなイージス艦へ搭載する計画だ。そうなると搭載するレーダーはSPY-7ということになる。このレーダーは、防衛省の選定でライバルのSPY-6をあらゆる面で凌駕したとされる。しかしWINGが得た情報では、これは陸上への設置が前提であって、海上運用となって大幅に条件が変わってしまったことが分かった。特に経費の面では、SPY-7側にさらに多額のコストがかかる可能性が出てきた。改めて洋上での運用を前提とした再選定を行うべきだ。
 防衛省は2018年7月にレーダー選定の評価を公表した。レイセオン・テクノロジーズ製造のSPY-6と、ロッキード・マーティンのSPY-7を比較したものだ。大きく分けて、基本性能・後方支援・経費・納期の4点で評価したところ、納期の評価のみ同一となったが、基本性能・後方支援・経費のいずれもSPY-7を高く評価した。ただしこれは、まだ陸上への配備を前提とした評価だ。洋上で運用することになれば、船体の揺れや塩害などといった地上にはない要素を加えた考慮が必要なはずだが、防衛省ではこのときの評価を尊重する構え。民間企業に依頼したアショア構成品の艦船搭載に関する調査では、中間報告で搭載可能なことを確認したとして、今のところ再考せずにアショア構成品を搭載する姿勢を崩していない。

 

米海軍採用のSPY-6、15回のイージス搭載試験済み
未試験のSPY-7、トータルコストはいくら

 

米海軍は船種問わずSPY-6統一へ
あらゆる戦闘指揮システムと連接可能

 

レーダー統一で運用効率向上へ
柔軟な人員配置確保は可能か

 

防衛省評価で連続運用性に大差
2つのレーダー提案者はMDA

 

※写真1=レイセオン・ミサイル&ディフェンス社が今年7月、AN/SPY-6(V)1レーダーを米海軍へ初めて納入した。米最新イージス艦のジャック・H・ルーカスへ搭載する(提供:レイセオン・テクノロジーズ)

※写真2=ロッキード・マーティンの次期固定式警戒管制レーダー(LRDR)開発用サブスケールレーダー。このレーダーと同じ技術がSPY-7となる(提供:ロッキード・マーティン)