WING
三菱重工、伸び示せない防衛・宇宙事業の展開模索
阿部セグメント長、新大綱・次期中期防を注視
三菱重工と言えば防衛産業、宇宙産業のトップメーカーであることは、衆目の一致するところだ。その防衛・宇宙セグメントを率いる阿部直彦執行役員・防衛・宇宙セグメント長に、同セグメントの業績と今後の事業拡大の方策、最重要プロジェクトのF-2後継機、宇宙商業利用の拡大への取り組みなどを聞いた。三菱重工の2017(平成29)年度防衛装備庁中央調達額は2457億円で、契約企業のトップであった。16式機動戦闘車、12式SSM、10式戦車、潜水艦、SH-60K改開発、ペトリオット、12式SSM改および哨戒機用新ASM開発が主な調達品であった。
航空機の国家目標制定を希望
F-2後継機の国内主導開発議論を
「防衛装備品の中で、車両や艦艇は国内での製造が基本になっている。艦艇は、長い歴史の中で、国家戦略/安全保障として造船所を国内に維持していくという意志或いは方針のようなものが感じられる。一方、航空機では、その製造基盤の維持あるいは強化に対する国としての考え方が見えにくい。どこまで国内に残し自立性を確保するか、どこまで他国に依存するか、考え方が定まっていないように思う」と阿部セグメント長は防衛装備品を横から見た視点で指摘した。
「そういった観点からもF-2後継機を如何にすべきかの議論をきちんとするべきではないか」と阿部セグメント長は言う。それはH3ロケットの開発に先立って行われた議論で、国として持つべきとの結論を得て、国の基幹ロケットという考え方に基づき開発が始められた経験を踏まえての提言だろう。宇宙分野では10年後くらい先の計画が見えないと投資ができない、人材の維持、採用ができない、という理由から予見性が必要だと業界が強く主張し、宇宙基本計画には「予見性」という文言が盛り込まれた。
防衛分野でも5年間の中期防、10年程度を対象とした防衛大綱に別表として主要装備の数量が入っている。しかし、閣議決定される国の計画でありながら、充足されないで後送りとなる例も少なくない。経団連などで提言を行い、早期調達を要望している。「特に問題なのは、防衛装備生産の裾野をなす専門性の高い中小企業ほど影響を受けやすく、厳しい状況にあることだ」と阿部セグメント長は言う。これらの中小企業が防衛生産、航空機生産から撤退したり廃業に追い込まれたりしてサプライチェーンが維持できなくなれば、装備品の日々の運用を支える補用品の生産、修理にも大きな影響が出てくる。