WING
大韓機エンジン火災、ディスクU字型溝に許容値超の段差
エンジン製造時や整備検査で段差や亀裂見逃す
去る5月27日に大韓航空の777-300型機(HL7534)において、羽田空港で離陸滑走中に第1エンジンから火災が発生した事故について、運輸安全委員会は7月26日、エンジン(PW4090型)の第1段高圧タービン・ディスクが破断し、その破片がエンジンケースを貫通したためとの事故原因推定結果を明らかにした。タービン・ディスクが破断した理由については、エンジン製造時に第1段高圧タービン・ディスク後面のU字型溝部分加工に際して、許容値を超える段差が生じ、エンジン使用中にこの段差から低サイクル疲労による亀裂が発生し、その亀裂が進展したためと分析した。
エンジン製造時に段差が見逃されたことに加えて、エンジン使用中に大韓航空による整備におけるディスクの非破壊検査でも見逃された可能性があると指摘されており、製造・整備における点検”漏れ”が重なったことが事故に繋がったかたちだ。ただ、問題となったU字型溝はこれまで重要点検箇所には指定されていなかった。
運輸安全委員会によれば、第1エンジンで火災が発生したことについては、第1段高圧タービン・ディスクの破片がエンジンケースを貫通した際の衝撃とエンジンケースに取り付けられていた燃料滑油交換器の外側ケースに亀裂が生じ、その亀裂から漏出した燃料および滑油が第1エンジンの高温部に接触して発火したことによるものと分析している。
この事故は去る5月27日に、羽田空港発金浦空港行きの定期便2708便として羽田空港の34Rを離陸滑走中、第1エンジンから火災が発生。警報装置が作動したため離陸を中止し、滑走路上で停止し、緊急脱出を行ったというもの。同機には機長のほか乗員16名、乗客302名の計319名が搭乗していた。緊急脱出時に乗客40名が軽傷を負っている。
※写真=エンジンの損壊状況(提供:運輸安全委員会)