記事検索はこちらで→
2018.07.27

WING

F-2後継機は日本主導の開発要望し、関連技術磨く

三菱重工守田昌史航空機・飛昇体事業部長に聞く

 

 三菱重工防衛・宇宙セグメントの守田昌史(もりた まさし)航空機・飛昇体事業部長はこのほど、WINGの取材に応じ、F-2後継機に向けた検討を進める防衛航空機部門と新規プロジェクトが並進する飛昇体部門の最新状況を説明し、「F-2後継機はわが国主導の開発を強く要望しており、そのための将来戦闘機技術を磨いている」と述べた。記者は「わが国主導の開発」を裏付ける将来戦闘機技術についてはシミュレーション施設(シミュレーション・ラボラトリ)での説明も受けた。

 

改修、改善が自由に行える『わが国主導の開発』
官民のF-2経験技術者が定年目前に

 

《F-2後継機のあり方と戦闘機技術研究試作》
 F-2後継機のあり方について、議論の行方がしばしば話題となる時期を迎えて、守田事業部長は気をもんでいると近況を吐露する。「我々はF-2後継機は『わが国主導の開発』とすることが日本の防衛のためにも、防衛技術・生産基盤維持のためにも最も望ましいと考えている」と基本的な立場を示す。近年の戦闘機は、改修、改善を繰り返しながら30年、40年と長期にわたり運用される傾向にある。「同じ形態をそのまま使い続けることはまずないので、主体的な拡張性の確保が非常に重要だと考えられる」と守田事業部長は指摘する。航空自衛隊の戦闘機の内、F-2はF-16をベースとしてはいるが、日本が自主技術を適用して改造開発を主導した機体なので、新しいアビオニクス、ミサイルなどを装備するための改修、改善が何度も行われ、現在もそれが続いている。F-15はライセンス生産で取得され、部分的な技術開示といった制約のもと、これまで国産ミサイルの搭載などの改修を行いながら運用してきた。しかし、近年の傾向として技術開示の範囲がさらに制限される傾向にあり、従来と同じようには改修ができない恐れが関係者から指摘されている。
 このように、「わが国主導の開発でないと、必要な時期に改善ができず、運用に支障を来す恐れがあり、自由な拡張性を持たせるためにも『わが国主導の開発』が非常に大事であり、大前提である」というのが三菱重工の考え方と言える。
 そして、「わが国主導」で開発されたF-2戦闘機の開発経験者の多くが定年退職時期を迎え、官側でも開発に関わった技官、技術幹部やテストパイロットは少なくなっている。技術伝承の意味からもF-2後継機をわが国主導で開発着手する時期は待ったなしの時期に来ている。守田事業部長は「開発着手時期が遅れれば、戦闘機開発能力を失ってしまうかもしれないという危機感を覚えている」と語る。
 先進技術実証機X-2を研究試作し、飛行試験を実施したことで、特定の分野では技術の途絶を少し先に延ばせたかもしれない。だが、守田事業部長は「X-2に参画していない会社もあり、レーダーなどのミッション機器は搭載していないので、戦闘機としての全てのインテグレーションの経験が継承できた訳ではない。」とその限界を指摘する。「是非とも、次期中期防にてわが国主導の開発が速やかに始まることを期待している」と述べた。
 改修、改善がやりやすいよう近年の装備品はオープン・アーキテクチュア化が進んでいるというが、コア部分を持っていないと、必要な改修は全て外国に依存して行うことになりかねない。
 さて、「わが国主導」でと言えば、日本の戦闘機技術が開発という選択肢を選びうるだけのものであるのかという議論があるが、昨年からの1年間でこれまでに研究されてきた成果がかなり試作として形を見せてきている。
 守田事業部長はその主要な成果を列挙した。
▼ステルス機を探知できるセンサ技術=レーダーと赤外線センサのデータ統合
▼ボルトを使用しない接着による軽量機体構造技術
▼ウエポン内装化技術
▼アクチュエータの電動化技術
▼統合火器管制技術=戦い方を変える「クラウドシューティング」。ネットワークによるミサイル誘導
 詳しくは別記事にまとめている。
 これらの研究成果を総合的に評価するものとして取り組んで来たのが「バーチャル・ビークル」で、守田事業部長は「パラメトリックに要目を変えられるので、評価パイロット等官側のご検討結果に基づき、パラメータをいろいろ変えながら評価していただいていると聞いている」と述べた。

 

シミュレーション・ラボラトリの様子(提供:三菱重工)