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2018.08.23

ウイングトラベル

“旅行振興課”復活、双方向の旅行振興を強化

田端新観光庁長官、外交面で海外旅行促進重要

 田端浩新観光庁長官は8月22日の就任会見で、着任早々観光庁の体制や担務を一部変更し、「旅行振興担当参事官」を新たに配置し、“旅行振興課”を実質的に復活させたことを明らかにした。旅行振興課は、観光庁が観光部だった3課時代に、旅行振興全般に関わる施策を広く担当していた課で、田端新長官、田村前長官らが歴任した観光庁の原点の一つと言える課。観光庁の組織が大きくなる中で、宿泊業や旅行業を所管する「観光産業課」に集約されたが、その一方で、二国間観光促進協議などの双方向交流施策は「国際観光課」が担当するなど、実際に旅行振興を進める上で重要な施策は各課に分散しており、産業界とも連携しにくい状況となっていた。
 田端新長官は、「新任の永井旅行振興担当参事官には、旅行振興課長としてやっていた仕事をしてくれと言っている。宿泊産業や民泊新法は大事で、鈴木観光産業課長が引き続き担当するが、宿泊産業と旅行業とでは、旅行振興を進める施策はビジネスモデル的にも違うし、視点が違う。そこは両方とも大事だが、きちんと分けて、旅行振興担当参事官を置いてしっかりやっていくことにした」と述べた。
 新設した旅行振興担当参事官は、旅行振興業務として、日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)、アウトバウンド促進協議会、若者の旅行振興、休暇改革、二国間観光促進協議などを担当する。また、「国民の働き方や休暇改革が進めば、旅行も一つの選択肢になる」として、休暇改革を含む旅行振興関連施策を広く担当する。
 また、課長級の参事官だけでなく、部長級の審議官についても、祓川氏の後任に当たる金井昭彦審議官が観光産業や旅行振興などを担当し、全庁挙げて旅行振興に取り組むことを明確化した。
 田端新長官は、就任の抱負でも、観光ビジョンに掲げた目標達成に向けた高次元の観光施策推進と合わせて、「観光先進国を実現するためには、多くの世界の国々との相互交流が極めて重要。外交面でも、日本人のアウトバウンド拡大を進めることが外交戦略として重要であり、力を入れる」と述べ、観光庁としてアウトバウンドを含む双方向交流に正面から取り組む姿勢を強調した。
 インバウンドが急速に伸びる一方で、アウトバウンドは2000万人の目標を掲げながらも長らく頭打ちの状況が続いており、国際交流のアンバランス化が課題となっている。外交面でも、日本へのインバウンドが増加する一方で、日本人海外旅行者は伸びていないことを問題視する国や地域は増えており、二国間観光協議などでも日本の政府や産業界に対策を求める声は多い。今回の体制変更で、そうした諸外国の声に応える実効性ある施策が打ち出せるかどうか、観光庁の今後の取り組みに期待したい。

 

 新税活用、高次元の観光施策を一気呵成に推進
 実効性高い施策を産業界と一緒に進める

 また、田村前長官時代には多数の法案改正を行うなど、観光関連の制度改正が進んだが、田端新長官は「昨年作ってきた国際観光旅客税は、27年ぶりの新税。観光先進国をめざしていく中で、よりしっかりと効果ある施策を打つためには財源的な予算措置が必要。官房の立場でも大事な仕事だとして、観光庁と官房と一体で実現できた」として、観光先進国に向けた財源確保が必要不可欠だったとの認識を表明。その上で、「新税を活用した高次元の観光施策を一気呵成に進めることが大事だ」と強調した。
 観光に関わる施策は幅広く、様々な意見や要望も寄せられているとしたが、「それらに耳を傾けながら、どうしたら観光施策にとって一番効果のある、実効性のあるものができるか、この充実された観光庁の体制を活かして、産業界と一緒に進めていきたいのが狙うところ」として、新税を活用した施策の中身が重要になると指摘した。
 とくに、目前に迫る来年度予算の概算要求は、国際観光旅客税が満年度で付く初年度の予算要求となる。田端長官は、「先進性が高く費用対効果の高い施策であることが求められており、初年度なのでしっかり中身のあるものにしていきたい」と意欲を示した。

 

 関係部局や関係省庁、産業界と緊密に連携
 産業界は休暇改革率先を、利用者目線が重要

 具体的な施策を推進する上では、様々な主体との緊密な連携を図っていく点も強調した。田端長官は、「国土交通行政全般に関わった経験を活かし、関係部局や関係省庁、産業界、多くの方々と緊密に連携し、行政の成果をあげたい」と述べ、裾野が広く関係者も多い観光だからこそ、関係者との緊密な連携は欠かせないと指摘。連携を強化する中で、関係部局や産業界などに対しても、観光先進国をめざすのに必要な取り組みを進めるよう働きかけていく考えだ。
 例えば休暇改革でも、「観光産業界自身が休暇改革や働き方改革を実践していかなければ、説得力がない」として、観光庁自らも働き方改革、休暇改革に取り組んでいくと宣言。
 また、関係部局についても、リピーターが増えれば地域のバスやタクシー、レンタカーなどの二次交通が重要になるが、「利用者目線で、駅や空港、長距離移動の拠点からどう地域を回るかについては、まさに自動車行政の出番。そういう目線で取り組みをしてもらいたい」とはっぱをかけた。「旅行需要は既に顕在化している。利用者目線でルールは変えていけばいい」と、担当部局でも旅行者目線で取り組みが進むことを期待した。

 

※写真=田端浩観光庁長官