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2022.06.03

WING

第153回「日本が危ない」欧州より厳しい安全保障環境と知れ

北海道の権利もロシアのもの

中距離ミサイルの配備急げ

 

 ロシアのウクライナ侵略を受けて、日本も対ロシア制裁に加わり、ロシアも首相、岸田文雄らの入国を禁止する対抗措置をとるなど日露関係が急速に悪化している。ロシアの有力政治家からは「一部の専門家によるとロシアは北海道の権利を持っている」との発言も飛び出した。そうした中で、自民党内からは日米の中距離ミサイルを北海道に配備するとのアイデアが浮上した。
 中距離ミサイルを北海道に配備すべきとの考えを表明したのは、自民党外交部会長で参院議員の佐藤正久だ。佐藤は5月上旬に米ワシントンを訪れた際、シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)で行った講演の中で、「北海道に日米の中距離ミサイルを置くことが陸上における日米協力での反撃能力構築の第一歩になる」と語った。
 発言を報じた毎日新聞によると、元陸上自衛官でもある佐藤は北海道について「住民感情が自衛隊や米軍にも比較的好意的で、ロシアへの住民の懸念も高まっている」と説明した。佐藤が現役自衛官だった冷戦期、日本の「主敵」はソ連であり、陸上自衛隊の精鋭部隊は北海道に配置されていた。
 冷戦終結後、中国の軍事力増強により南西諸島方面重視の傾向が強まった。そうしたなかで財務省や民主党政権で削減のターゲットとされてきたのが北海道の陸自部隊だった。確かにソ連崩壊後のロシア軍の動きは鈍かったため、ロシア脅威論は薄まった。
 だが、最近は国力の回復とともに極東地域での訓練回数も増え、同時に中国軍との共同訓練も行っている。昨年10月下旬、総選挙の最中に中国とロシアの海軍艦艇10隻が艦隊を組んで日本列島をほぼ一周したのは記憶に新しい。
 加えて、温暖化による海水温上昇で海氷が減少し、ロシア側の北東航路は年間100日程度、海氷なく航行することが可能となった。ロシアは航路上の資源開発に力を入れるとともに、千島列島に対艦・対空ミサイルを配備するなど軍事面での動きも活発化している。中国も「北極近接国家」を宣言し、進出を加速している。
 今回のロシアによるウクライナ侵略により、日本にとっては中国、北朝鮮だけでなくロシアも加えた三正面に気を配る必要性が改めて高まった。そこで佐藤は日米共同の「矛」を北海道にも配置する必要性を強調したのだった。

 

在日米軍問題視するロシア
陸上イージスが侵略の一因

 

 日本の長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」は南西地域の島しょ防衛を念頭に2017年に導入が決定された。防衛省は4月5日の自民党の会合で、年末に予定している防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画(中期防)の改定に合わせ、「スタンド・オフ・ミサイル」を増強する方針を示した。佐藤は「スタンド・オフ・ミサイル」の一部を北海道の演習場などに配置する案を示したのだった。

中国の地上発射型弾道ミサイル発射機数の推移(防衛白書より)

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