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2018.09.27

ウイングトラベル

ツーリズムEXPOで海外旅行シンポジウム開催

若者旅行促進、LCC・デジタル化で再成長へ

 ツーリズムEXPOジャパン会期中に開催された海外旅行シンポジウムでは、日本人アウトバウンドの再成長の可能性について議論された。
 基調講演に登壇したANA総研の稲岡研士副社長は、2030年の訪日6000万人(航空5000万人、クルーズ1000万人)、海外3000万人に対して必要な供給席数は1億席だが、現状は7200万席しか見込めず、供給確保が困難な見通しにあることを説明した。
 また、日本の海外出国率が世界平均18%を下回る14%と低いことを挙げた。年代別に見ると、2000年と2017年の比較で、20-39歳のミレニアル世代は人口が765万人減少していることから出国者数は減少しているものの、出国率は増加している。とくに20-24歳の青年層は男性が5.4%増の16.8%、女性が10.2%増の35.2%と増加しており、海外の関心度が高いことを指摘した。

 

 稲岡氏、アウト拡大がインバウンド成長促す
 檀原氏、若者の海外渡航に潜在市場あり

 稲岡氏は、旅行会社は世界の富裕層3600万人のうち日本の269万人をターゲットする旅行商品の造成を提案した。
 さらに、旅行会社のデジタル時代への対応、地方創生インバウンドの視点から、アウトバウンドがインバウンドを促進するとして、地方発の取り組みの必要性を強調した。
 基調講演の後、ミキ・ツーリストの檀原徹典社長、ハナツアーの権相鎬常務理事をパネラーに、航空新聞社の石原義郎ウイングトラベル編集長をモデレーターに、日本人アウトバウンドの再成長についてのディスカッションが行われた。
 檀原氏は、2017年の出国率が日本は人口1億2670万人で14.1%に対して、韓国は人口5170万人で51.2%、台湾は人口2350万人で66.6%と圧倒的に高いことを指摘。2017年の海外渡航者数も日本の17889万人に対して、韓国は2650万人、台湾も1565万人と韓国に至っては3000万人に近づく勢いであることを説明した。
 渡航者数を年代別に見ても、30代の出国者率は韓国で71%、台湾で97%に達しているのに、日本は21%にとどまり、日本が渡航者数で韓国、台湾を上回るのは60代以上のシニア世代のみであることを指摘、若者の海外渡航に潜在市場があることを示唆した。
 また、方面別に見ると日本人のヨーロッパ渡航が停滞する中で、韓国・台湾ではヨーロッパが伸長している。とくにチェコは韓国・台湾からの渡航者が日本を大きく上回っており、ロング方面も好調に伸びていることを指摘した。

 

 権氏、韓国は3000万人へ、日本LCC活用を
 石原氏、アウトバウンドの追い風に応える

 これを受けて、ハナツアーの権常務は、2018年は現段階で出国率が52%と半分を超え、このまま推移すると、韓国人渡航者数は3000万人を超える見通しを明らかにした。
 権常務は、アウトバウンド・インバウンドの需要のアンバランスを解消するためには、日韓両国間の観光需要を同時に増加することが必要とし、日本発アウトバウンド成長のためにはLCCの積極活用、消費者への拡販を提言した。
 日韓航空路線のLCCシェアは今や67%を占めており、とくに、地方空港のインフラを改善し、国際線就航を図ることで供給量を拡大し、地方創生が可能と強調、地方のインバウンド、アウトバウンド促進を提言した。
 旅行会社に対しては、LCCを利用した商品ラインナップの強化、人気の旅行先を中心とした周辺地域の旅行商品の開発を挙げた。
 この先、日本人アウトバウンド成長するとしても、それにどのように旅行業界が対応するかが課題になる。シンポジウムでは、旅行業界はデジタル、テクノロジーによるイノベーションが遅れており、OTAのシェアが拡大する中で、旅行会社のAI・デジタル時代への対応、オンライン化を進める必要があると指摘された。
 また、三者ともに、ポテンシャルの高い若者のアウトバウンドを促進することにより、日本人アウトバウンド全体が成長することで一致した。
 モデレーターの石原氏は、政府がインバウントとアウトバウンドのアンバランス是正に向けて、双方向交流の促進を謳い、観光庁が若者のアウトバウンド促進に対して、2019年度予算で概算要求するなど、アウトバウンドへの追い風が吹いているとし、旅行業界もこれに応えるべきと強調した。

 

※写真=海外旅行シンポジウムの模様