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2022.06.29

WING

英当局、ヒースロー空港使用料上限を26年まで毎年6%ずつ減

短期的には上昇?IATAが21年比で56%上昇と反発

 英国民間航空局(CAA)は、ヒースロー空港(HAL)が航空会社に課すことができる今後5年間の空港使用料の上限に関する最終案をまとめた。それによれば、航空会社がヒースロー空港に支払う旅客1人あたりの平均最高料金は、現在の30.19ポンドから2026年には26.31ポンドに引き下がる見通しにあるとことを明らかにした。インフレの影響を除くと、これは2026年まで毎年、今日のレベルからほぼ6%ずつ減少することに相当するものとしている。  
 CAAはこの料金設定は、パンデミックからの回復に伴い旅客数の増加が見込まれること、さらには2021年にパンデミックによって被った課題を反映したものとの認識を示した。  
 ただ、このCAAの空港使用料上限最終案に、国際航空運送協会(IATA)はすぐさま反発。それというのも、足元では同空港の空港使用料が大きく上昇しているためだという。
 IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は今回のCAAの決定について、「2歩下がって、結局1歩進むようなもの。長期的には料金が若干下がるのは良いことだが、現実にはイギリスの競争力、旅客、航空会社は今現在、助けを必要としているのだ」とコメントした。  
 その上で「現実には空港使用料は当初2021年比で56%という驚異的な値上がりになっている」と指摘。「(今回の最終案は)誤った仮定に基づくもの。パンデミック後の旺盛な旅客需要によって、CAAの最終案はすでに間違っていることが証明されている。独立した分析によれば、ヒースロー空港への投資と余裕のある収益率を守りつつ、使用料を現在でも下げる余地があることが明らかになっている」との見解を示すなど、CAAの最終案を強く批判した。
 「CAAは、顧客から金をむしり取ろうとする飽くなき欲望によって『グローバル・ブリテン』の競争力を損なうだろう。この独占企業(ヒースロー空港)に利益を与えることを止めなければならない。CAAが今日の消費者を保護する機会を持たない限り、このプロセス全体を見直すべきだ」と主張するなど、短期的に多大な影響を受けるとの認識を示した。
 ちなみにCAAが最終案で示したパッケージは、(1)5年間の調整期間により、空港は消費者への料金を削減し、投資家に中期的な確実性を提供すること。調整期間は「H7」と呼称し、2022年から2026年までを設定する、(2)消費者にとって手頃な料金であり、旅客数の回復を支えるものとすること、(3)ヒースロー空港が、空港の安全性、セキュリティ、回復力を維持するために適切な投資を行い、優れた旅客体験価値を提供できるようにすること。次世代セキュリティ機器やターミナル2の新しい手荷物システムへの投資も含むとした。  
 CAAのリチャード・モリアーティ最高責任者は「本日の発表は、消費者のために正しいことをするためのものだ」と主張。「我々は、将来の空港使用料水準について互いに異なる見解を持つヒースロー空港と航空会社の双方の意見に非常に注意深く耳を傾けた。我々の独立した公平な分析は、消費者にとって手頃な料金設定であると同時に、ヒースロー空港が将来に向けて必要な投資を行えるようにバランスをとるものだ」との見解を示した。
  CAAは今回の最終案をもとに、13億ポンドを投じてターミナル2の手荷物施設を改善することのほか、将来的には行列を減らすための新世代セキュリティスキャナを導入するなど、利用者利便改善に向けた多額の投資が許可されることになると指摘した。
 今後、ヒースロー空港会社は8月頃を目途に、将来の空港使用料に関する協議を開始すると予想されているという。最終提案に寄せられた回答を検討した後、CAAはヒースロー空港の免許に加える修正について最終決定を下す方針で、現在のところ今秋に最終決定を発表する予定にあるとした。

※写真=ヒースロー空港の空港使用料は長期的には値下がりする見通しにあるが、一方では足元では大きく上昇。IATAは英民間航空局の決定に反発している