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川崎重工業、新形態K-RACER「X2」が初飛行へ
23年度は飛行領域拡大、量産機開発に着手も
川崎重工業航空宇宙システムカンパニーが研究開発を進めている無人回転翼機「K-RACER」が、物流向け量産機のプロトタイプとなる「X2」の初飛行に3月中にも入る。初飛行は航空宇宙システムカンパニーのお膝元である岐阜工場で行う計画だ。
川崎重工業はこれまで「X1」を使って飛行技術実証を進めてきたが、「K-RACER」開発は、「X2」の初飛行と共に、いよいよ新たなフェーズに突入していくことになる。2023年度から低地及び高地でのホバリング性能や通信能力の確認など、飛行領域の拡大に向けた飛行試験を行う計画で、その後段階的に伊那市における山岳地物資輸送の実証試験に移行する計画であるとした。
「K-RACER」を活用した新たな物流システムについて、川崎重工業は2026年度を目途に事業化することを目指しており、「X2」による飛行実証と並行して、量産機の開発にも着手する計画だ。
航空宇宙ディビジョンヘリコプタプロジェクト総括部ヘリコプタ設計部の櫻田武士部長と林田篤副部長(兼ヘリコプタ設計一課長)が本紙の取材に応じて明らかにした。
X1開発で付けた自信
X2で次なるステージへ
川崎重工業ではこれまで「X1」を投入して技術試験や飛行実証を実施してきた。櫻田部長によると、「昨年はX1を使って、福島ロボット・テストフィールドにおける離着陸を含めた自動飛行と、機外に荷物を吊り下げて飛行するスリング飛行の実証準備を進めた」ことを明かした。櫻田部長は「我々は商品として無人ヘリコプターを手掛けた実績は無い。X1の開発・実証を通じて、無人ヘリコプターの自動化に関するノウハウの蓄積および実績を積み重ねたことにより、次のステージに向けた自信を付けた」ことを明かした。
ちなみに、一昨年には長野県伊那市において「X1」による貨物を搭載しての飛行実証を行った。この試験では標高850mの地点からペイロードとして約60㎏の米を搭載して飛行。機体の機動性などを確認することに成功した。
この「X1」は「コンパウンド・ヘリコプター」タイプの機体だ。コンパウンド・ヘリコプターは、ヘリコプターのようにメインローターの回転面を傾けながら機動することに加え、固定翼の先端に取り付けた推進プロペラを使って加速することが可能な速力を重視したもの。「X1」による飛行実証は、これまでの成果をもって「一区切り」とすることになり、今後の実証は「X2」で行われることになる。
※写真=「X1」の前で櫻田武士部長と林田篤副部長
※この記事の概要
・物流特化型として設計した「X2」
標高3千mでも100㎏持ち上げ
・量産機の基本設計も順次開始
エンジンは別物に、26年度事業化
・K-RACERの市場規模
ユーザーレベルの運用想定した設計
・高速度実証機から始まったK-RACER
コンパウンド形態も再浮上?
・モノ売りだけではない、コト売りも
・防衛用途でセンサーなど任務装備の搭載も
有人回転翼とのチーミング検討 など