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2023.04.21

WING

第175回「日本が危ない」決して台湾を見放してはならない

総統訪米、前総統は中国へ
2人の「えい」戦いの行方は

 

 台湾情勢が目まぐるしく動いている。台湾総統、蔡英文が米国、前総統の馬永九が中国を同時期に訪問した。米国と中国の対立が激化するなかで、日本にとっても台湾海峡の安全は政治的にも経済的にも死活問題であり、正面から取り組む必要がある。
 蔡英文の訪米と馬永九の訪中を台湾メディアは、漢字は異なるものの音が同じ名前を使って「2人の『えい』の戦い」と形容した。
 蔡英文はもともと8月に訪米する予定だった。台湾が外交関係を持つ南米パラグアイ大統領の就任式に合わせ、米国訪問を計画した。ところが、パラグアイでは野党候補が4月の大統領選で勝利すれば中国と国交を結び、台湾と断交すると公約として掲げた。経済の柱である牛肉と大豆の対中輸出を拡大するためだ。
 そこで蔡英文は訪問を4月に前倒しすることを決めた。もっともパラグアイ情勢は表向きの理由で、訪米を急いだのは米下院議長ケビン・マッカーシー(共和)が昨年夏の前議長ナンシー・ペロシ(民主)に続き台湾訪問を希望していたからだ。中国はペロシ訪台に反発し、その直後に台湾周辺で大規模な軍事演習を実施するなど緊張が高まった。
 蔡英文率いる与党・民進党は危機をコントロールできないとの不満が高まり、昨年11月の統一地方選で民進党は敗北した。マッカーシーが訪台すれば再び同じような緊張が高まり、来年1月の総統選に悪影響を与えかねない。そこで蔡英文は自ら訪米し、米国内でマッカーシーと会談する道を選んだのだ。
 蔡英文は訪問で「自由」「平和」「民主主義」の3つをキーワードに掲げた。ニューヨークでの在米台湾人ら約700人を招いたパーティーでの挨拶でも「台湾は今後も自由と民主主義の道を歩んでいく」と強調した。

 

手厚く歓迎する米超党派
武器供与と経済協力を約束

 

 米側も呼びかけに応じ、ロサンゼルスのレーガン記念図書館で行われた会談には共和党だけでなく民主党議員も参加し、超党派で台湾を支持していると、「連帯」をアピールした。

 

秦剛国務委員兼外相への抗議むなしく拘束の邦人を連れ帰ることはできなかった(提供:外務省)

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