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2023.07.03

WING

空幕×ANA特別対談(2)、わずか0.1%のSAF取得合戦

 官・民で航空以外の分野も協力

(前号からの続き)
 航空自衛隊は、政府専用機や戦闘機へSAFを搭載することで、防衛分野でもレジリエンス強化とともに環境問題への対応に取り組んできた。そして政府専用機の整備やハンドリングを行うANAグループでは、航空分野をリードするかたちでサステナビリティへの取組みを推進する。そうした防衛と民間による環境問題の対応などについて、航空幕僚監部装備計画部の小島隆部長とANAホールディングス上席執行役員の宮田千夏子グループCSO(Chief Sustainability Officer)との特別対談を前回に続いて紹介する。

 航空幕僚監部装備計画部小島隆部長(以下敬称略)「SAFに期待する効果や現在の課題などを教えていただきたいのですが、航空分野にとって、SAFの搭載を進めることが一番重要な課題である一方で、現時点では生産量が非常に限定的で、コストも高くなっていると認識しておりますが」

 ANAホールディングス上席執行役員宮田千夏子グループCSO(Chief Sustainability Officer)(以下敬称略)「宮田「SAFの大きなポテンシャルは、今使用している空港施設、エンジン、航空機といった既存のインフラ施設をそのまま使えることだと思っています。そういう意味では、先ほどご紹介いただいたように、今使っている戦闘機への搭載についても、従来と同じ給油方法で、従前から使っているジェット燃料に混ぜて使うことが可能です。このポテンシャルの大きさが、航空産業にとって脱炭素化に向けた鍵になるところです。お話しいただいたとおり、世界中で使用されるジェット燃料に比べて、現在のSAFの供給量は0.1%以下です。どの航空会社にとっても、脱炭素化の切り札であるにもかかわらず、供給量が絶対的に少ないのです。それからもう一つ、供給量との関係でいえば、ジェット燃料に比べて価格帯が2倍から10倍にもなっています。そういう意味では、航空会社としてSAFを安定的に使い続けられる環境をつくっていかなければならず、そもそも脱炭素化への手段を手に入れることが重要です」