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2023.07.06

WING

西谷空将、航空自衛隊の未来を創造する航空教育集団

 ICTやXRなど先端技術に期待、変えてはならない人格形成

 航空教育集団は、航空自衛隊の教育全般を司る部隊。司令官を務める西谷浩一空将は、若い隊員に自衛官としての学びを提供する、いわば航空自衛隊の未来を創造する役割を担い、部隊のトップとして邁進する。戦後最も厳しく複雑とされる安全保障環境において、全国的に人手不足の問題が深刻化する中、求められるのは隊員をより効果的に成長させる教育の高度化だ。そこで期待されるのはXRなど先端技術の導入であり、従来以上に高度なノウハウを教えられるようになるという。一方で変えてはいけないものもある。それは人格形成に寄与する精神面の教育だ。変えるべきものと、変えてはいけないもの。相反する2面のハイブリッドによる教育が明日の航空自衛隊を創ることになる。

――本日はよろしくお願いします。まずは教育全般を所管する司令官としての方針について教えてください。
 私自身は航空機整備幹部で、航空教育集団は整備幹部としての道しるべを最初に示してくれた特別な思いのある部隊です。幹部候補生学校を経て、第1術科学校で航空機整備を学び、今があります。教育集団は航空自衛隊の教育を司っており、将来活躍する隊員を育成しているため、ある意味で航空自衛隊の未来を創造していくという、重要な役割を担っています。そのため、現職を命じられたときには、その重責に身が引き締まる思いでした。一方で、航空自衛隊の未来である隊員を教育するという仕事であり、やりがいのある仕事だと感じているところです。
 防衛大学校以来これまで40年以上も防衛省・自衛隊で様々な仕事を行ってきた中で、航空教育集団司令官としての指導方針は“今この一瞬に全力を尽くせ”です。いうなれば、人は今しか生きられない。過去にさかのぼってやり直すことも、未来に先回りすることもできない。できることは過去を糧にすることと、未来に対する準備。それを行うのはまさに今、この一瞬にどれだけ頑張れるか。それが唯一明るい未来を掴む方法であると思って指導しています。
 先般、安全保障会議・閣議決定された国家防衛戦略において、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、我が国の防衛力を抜本的に強化することが示されています。重視する能力として、スタンドオフ防衛能力をはじめとした7つの機能・能力があります。加えて、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤、あるいは防衛力を支える人的基盤の強化が重視されており、人材育成の大きな要素として、教育基盤の強化を図っていくことになります。
 防衛力の中核となるのは、隊員そのものであり、私たちとしては優秀な隊員を育成することで防衛力の強化に取り組むことになると考えています。私たちが考える優秀な隊員とは、知識や技能の習得はもちろん、健全で強靭な身体に加え、粘り強く任務を全うしようとする不撓不屈の精神を持った人格者です。個人として心技体を整えていくのは当然、集団として任務を果たすリーダーシップとチームワークも兼ね備えた隊員です。
 また、現在は様々な科学技術が進歩し、新領域といわれる宇宙・サイバー・電磁波のほか、クロスリアリティ(XR)や人工知能(AI)など、技術の先頭に立てる人材を育成することも、大切な課題だと考えています。私たちが育てる隊員は、リーダーシップとチームワークを備えると同時に、より専門性に長けた隊員です。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を考えれば、戦える、行動できる部隊、隊員を育成しなければなりません。さらにはスピード感が大事です。過去の例にとらわれず、新しいことにチャレンジしていく、そのような隊員を育てていきたいと思います。

 チームワーク養う従来の集合型
 テクノロジーで効率化できるリモート
 常続的に見直すカリキュラム
 変えてはいけないのは精神面
 常に新技術を求める風土
 単なる置換えでない高度化
 すでに進む部外力の活用
 民間技術あってこそのXR  など