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2023.09.28

WING

RR社、100%水素で「Pearl」アニュラ燃焼器の最大離陸推力

水素航空機実現へ道拓く、独自の燃焼噴射ノズル設計

 

ロールス・ロイスは独ケルンのドイツ航空宇宙センター(DLR)で100%水素燃料を投入した「Pearl700」エンジン用のアニュラ型燃焼器を使用した試験で、最大離陸推力に相当する条件下で燃焼が可能であることを実証することに成功した。

これは水素航空機実用化に向けた大きな一歩で、業界初となるマイルストーンの達成となった。ロールス・ロイスはこの研究について、英国ラフバラー大学およびDLRらと共同で研究を進めている。

 

※写真=「Peal700」に100%水素を投入してアニュラ燃焼器が最大離陸推力に(提供:ロールス・ロイス)

ロールス・ロイスと英国のLCCであるイージージェットは、2030 年代半ば以降、単通路機市場を含むさまざまな航空機の動力源として水素燃焼エンジン技術を実装するべく、研究開発を進めている。

ロールス・ロイスは燃焼プロセスを制御するための先進的な燃料噴射ノズル設計に成功。水素はケロシンよりも高温かつ急速に燃焼するため、エンジニアリング上の大きな課題があった。

同社が設計した燃料噴射ノズルは、新しいシステムを使うことによって水素と空気を徐々に混合して火炎の位置を制御することを可能にしたという。燃焼器の運転特性と排気のどちらも期待通りであったことも確認することができたと評価した。

個々のノズルは、ラフバラー大学の試験施設とDLRでの中間圧力での試験後に、DLRにおける全圧燃焼器試験を実施した。

また、ロールス・ロイスは一連の試験を通じて、燃焼要素を十分に把握したとし、燃料をエンジンに供給するシステム、それらシステムをエンジンと統合作業を継続していることを明かした。

ロールス・ロイスのグラツィア・ヴィッタディーニ最高技術責任者(CTO)は「これは短期間に成し遂げた驚くべき成果」であることを強調。「水素を将来の真の航空燃料とするうえで業界が直面する重要な技術的課題のひとつである燃焼プロセスの制御を達成し、我々は引き続き前進し続けたい」とコメントした。

同社とイージージェットは昨年、英国ボスコムダウン基地で「AE2100」をグリーン水素で稼働するという世界初の快挙を達成済みだ。今回のラフバラー大学およびDLRとの技術検証を経て、気体水素を使った「Pearl」エンジンの地上試験という次の段階に向けた準備に進む方針で、ボスコムダウン基地で獲得した知見に付け加える。ひいては液体水素を使ったフルエンジンの地上試験へと繋げていく計画だ。

なおロールス・ロイスは、英航空宇宙技術研究所HyESTプログラム、ドイツLUFO 6 WOTANプログラム、欧州連合Clean Aviation CAVENDISHプログラムを通じて、水素研究の支援を受けていることとのこと。一方、ラフバラー大学はHyESTとCAVENDISHのパートナー、DLRとはWOTANとCAVENDISHのパートナーだという。

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