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2023.11.08

WING

第188回「日本が危ない」歴史的な決断は世界を変えるか

トマホークの前倒し調達
27年までに台湾侵攻か

 

 10月初めの日米防衛首脳会談で、日本が米国製の巡航ミサイル「トマホーク」(射程約1600キロ)を取得する時期について、当初予定していた2026年度から25年度に1年前倒しすると一致したことを受け、日米両政府は準備を加速している。焦点は指揮統制(Command and Control、C2)の在り方だ。
 日本政府は昨年暮れ、「国家安全保障戦略」など戦略3文書を改定するとともに、防衛費を大幅増額することを決めた。文書では、日本が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」に直面しているとして、これまで政策判断として否定していた「反撃能力」の保有が明記され、2027年度までに日本が主たる責任をもって敵対勢力の侵攻を阻止・排除できるように防衛力の抜本的強化が図られることになった。
 ただ、政府内には中国が27年までに台湾に武力侵攻するかもしれないとして、「27年までの抑止力をいかに確保するかが課題」(防衛省幹部)となってきた。
 今回のトマホークの前倒し取得はそうした政府内の危機感を反映している。ロシアによるウクライナ侵略に加え、中東ではイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル襲撃と、これに反撃するイスラエルのパレスチナ自治区ガザへの武力行使により、情勢が不安定化している。
 ウクライナに加えて中東でも紛争が拡大すれば、東アジアの安全保障にも少なからぬ影響が出るとみられる。いまの米国には複数の大きな紛争に、同時に対処できる軍事力はないからだ。

 

より厳しい安保環境に対応
旧来型も能力は十分

 

 ハマスによるイスラエル襲撃は想定していなかったが、防衛相、木原稔は就任後初の訪米で4日(日本時間5日未明)、国防長官ロイド・オースティンと会談し、400発購入予定だったトマホーク「ブロックV」のうち半分の200発程度を一世代前の「ブロックIV」に変更することで合意した。

 

トマホーク導入は、一部を1世代前のブロックIVへ変更して計画を1年前倒しした(提供:レイセオン)

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