WING
F-16燃料タンク投棄、原因は旧型部品の誤装着
エンジンの異常加熱で出火、パイロット判断は適切
青森県・小川原湖で今年2月に発生した米空軍三沢飛行場所属部隊のF-16戦闘機燃料タンク投棄事故について、米国による調査結果が11月20日、明らかとなった。対象のF-16は離陸後にエンジンから出火したとされるが、出火の原因が旧式のフェアリングが取り付けられ、離陸中にそれが破損したことによる異常加熱だと結論。パイロットが行った判断は、適切だったとした。
この燃料タンク投棄事故は今年2月20日、米軍のF-16が三沢飛行場を離陸した際にエンジンから出火。パイロットは、速度および高度を維持するため、緊急時の手順に従って外装燃料タンクを小川原湖へ投棄した。同機は無事に三沢飛行場へ着陸することができた。しかしタンクが投棄された小川原湖では、当時シジミ漁が盛んに行われていた。燃料タンクが漁を行っていた船の近くに落下したこと、さらにタンクから燃料が流出したことによって、漁場に深刻な損害が発生し、注目された。燃料タンクおよび燃料は事故発生後、海上自衛隊大湊水中処分隊などが回収作業に当たり、その後米側へ引き渡された。
一度は新部品へ交換も、発注ミスで旧型取付
米側の調査結果によると、事故原因とされる旧型のフェアリングは2012(平成24)年に取り付けられたものだという。同部品は空気の流れを整流するため、エンジンのタービン・フレーム前部に装着するもの。これが破損したことでエンジン内の空気がうまく流れず、異常に加熱したことよって出火に至ったとしている。
F-16のフェアリングは、構造の強度を高めた新型へ2010年までに刷新するよう、米国が指示していた。事故が発生したF-16でも、2010年8月に一度新型のものへ交換されていたが、2012年実施の整備で、誤って旧型のものが取り付けられてしまい、事故発生まで旧型のフェアリングを装着していた。
そもそも、一度は新型へ交換されたにもかかわらず、再度旧型のものが取り付けられた背景には、ずさんな管理が招いた部品のミス発注があった。2012年の整備で、発注したフェアリングの番号が旧型のもので、それが誤って取り付けられた。当時の三沢飛行場における部品管理の状況は、未使用品と使用済み品が混同していたり、使用部品に記録が付けられていなかったりと、管理が行き届いている状況ではなかったという。それが誤った整備が行われた要因となった。
一方、事故機に搭乗していたパイロットについては、機体出火の際の行動は正確かつ適切だったとしている。冷静な行動によって、より重大な事故につながることがなかったとして、パイロットに判断ミスがなかったことを強調した。
※写真1=第35戦闘航空団のF-16(提供:米太平洋空軍)
※写真2=破損したフェアリングの様子(提供:米太平洋空軍)
※写真3=小川原湖から回収された燃料タンク(提供:米太平洋空軍)