ウイングトラベル
★ChatGPTに聞く−2024年の旅行を展望する
日本人アウトバウンド、コロナ前水準に回復
UNWTO、2023年国際観光客数19年比90%
出国日本人50%、訪日外国人80%回復
2024年の旅行動向を展望するに当たり、今回はChatGPTに旅行業界を取り巻く環境の変化、現状、将来性、課題などを様々な角度から質問した。GPT-4のデータもアップデートされてきたので、良い機会と捉え、質問と回答を重ねた。
2023年のツーリズム産業は国際観光の本格的な回復の年だった。UNWTO(国連世界観光機関)は、国際観光客到着数は2023年末にパンデミック前水準の90%近くに達すると見通した。2023年9月までで、国際観光客到着数は約9億7500万人で、2023年の国際観光収入は2019年の1.5兆米ドルの93%に相当する1.4兆米ドルを予想した。10-12月次第ではこの予想を上回る可能性もある。
世界的にアウトバウンドに対する需要は好調で、多くの国々が2019年の水準を上回っている。19年比でドイツは13%増、米国は11%増と欧米各国が国際旅行を牽引している。
こうした中で、わが国を訪問する国際観光客、つまり訪日外国人旅行者数は、日本政府観光局(JNTO)によると、10月は19年比0.8%増の251万6000人とコロナ前を初めて上回り、11月も同水準の244万800人、1-11月累計はコロナ前74%の2233万人を超えた。暦年では19年比8割近くまで達すると見られる。
一方で、11月の出国日本人数は102万7100人。10月は単月100万人を割り込んだが、再び100万人台に乗せ、19年比では62.5%と6割台の回復を示した。1月の19年比30%から見れば5月のコロナ5類以降による水際対策緩和を経て回復率は上昇しているが、1-11月累計は19年比47%の867万6200人と5割に達していない。2023年は19年比50%近くの1000万人前後となる見通しだ。
UNWTO 24年国際観光客19年レベル予測
JTB 訪日3310万人とコロナ前超え見通し
UNWTOは2024年の国際観光到着客数について、コロナ前の2019年水準に回復することを予測している。不確定要因はあるものの、2023年の90%予測を踏まえれば、2019年を上回ることも容易に想像できる。
ChatGPTは「2024年の国際観光到着客数は、パンデミック前の水準に戻るか、それに近い水準に達する可能性が高い」と予測した。コロナからの回復とともに、経済の回復による観光への支出増、航空業界の回復、政治的・経済的安定、持続可能な観光ツアーの高まりなどを要因に挙げている。
JTBは2024年の旅行動向の見通しの中で、訪日外国人数を19年比3.8%増と過去最高の3310万人と予想した。日本の新型コロナに対する水際対策は世界各国から遅れを取ったが、2023年の急回復で、世界全体の国際観光到着客数の予測に追いつき、それを上回ることも予想される。
わが国の観光立国推進基本計画のインバウンド回復目標は、訪日外国人旅行者数を25年までに19年水準超え(19年3188万人)、訪日外国人旅行消費額を早期5兆円(19年4.8兆円)、訪日外国人旅行消費額単価を2025年までに20万円(19年15.9万円)、訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数を25年までに2泊(19年1.4泊)とすること。
訪日外国人旅行者数は2024年に目標を1年前倒しで達成する。訪日外国人旅行消費額の早期5兆円、訪日外国人旅行消費額単価を2025年までに20万円などは円安メリットで2023年に2年前倒しで実現する可能性も出ている。計画を上回る速度で回復したために、オーバーツーリズム対策が急がれている現状だ。
この計画のインバウンド目標数値は、2023年3月31日に閣議決定したものだが、2024年度を前に、観光立国推進基本計画の数値目標の見直しが必要になってくるのではないか。
2024年日本人海外旅行70-80%回復か
ChatGPT 阻害要因に過剰報道を指摘
わが国の訪日インバウンド政策は「順風満帆」のように見える。前述のオーバーツーリズム対策、持続可能な観光の推進は世界から遅れを取っているが、旅行収支の黒字幅が諸外国から目立つほど際立っている。では、2024年のアウトバウンドの見通しはどうだろうか。
観光立国基本推進計画のアウトバウンド回復目標は、日本人の海外旅行者数を2025年までに19年水準超え(19年2008万人)とする。2023年の日本人海外旅行者数は、前述の通り19年比5割の1000万人と予測される。
JTBの旅行動向見通しでは、2024年の海外旅行者数は19年比72.2%の1450万人と7割台の回復を予想した。既に欧米が23年時点でアウトバウンドが19年水準に達しているのに対して、今年の回復は70〜80%というのが大方の見方となっている。
これは、観光立国基本推進計画のアウトバウンド目標数値とほぼ合致しており、日本人海外旅行者数のコロナ前水準の回復は2025年との予測が現段階では妥当と思われる。
日本のアウトバウンド市場の遅れの要因についてChatGPTは、日本人のリスク回避的な文化、政府の旅行制限緩和の遅れ、航空運賃の上昇、日本経済低迷による海外旅行支出抑制などを上げている。
それらは要因として既出だが、もう一つ「メディアの影響」を指摘している。新型コロナの報道を例に取り、「海外旅行に対する懸念をさらに増幅している可能性がある。日本のメディアはしばしばリスクを強調する傾向があり、これが海外旅行への消極的な姿勢を助長しているかもしれない」。このことは業界内ではよく指摘されることだが、ChatGPTが要因に上げるほど、欧米からは異質に見えるのだろう。
今年の海外旅行、コロナ水準に回復
ChatGPT、航空運賃など具体策提示
2024年の海外旅行は、コロナ前の70%から80%回復が大方の予想と先程記した。ChatGPTは日本人の海外旅行をどう予想するかだが、GPT-4のデータはアップデートされているものの、現在は2023年4月までが蓄積されており、分析が古くなることは否めない。
それを前提として、ChatGPTは2024年の日本人の海外旅行動向について「パンデミック以前の水準に回復し、さらに多様化する傾向が見られるかもしれない」と答えた。
その理由として、コロナの影響がさらに軽減、日本経済が回復して個人所得が増加、航空運賃が安定、デスティネーションが多様化、持続可能な観光への関心の高まり、AIなどのテクノロジー活用、安全性への配慮などにより海外旅行への意欲が高まると指摘した。
海外旅行者をコロナ前水準に戻すための具体的な方策について、ChatGPTは4項目を示した。
第1は旅行者への安全な旅行方法や健康管理の情報提供を強化することで、海外旅行への信頼を回復させる。第2は、旅行業界や消費者に対する経済的支援策を実施することで、海外旅行の需要を刺激する。第3は海外旅行の魅力を再度アピールするための観光キャンペーンを展開することで、旅行への関心を喚起する。第4は航空業界と連携し、より手頃な価格での航空券の提供や多様な旅行プランを提案する。
こうした政府や観光業界が連携して対策を講じることで、日本からの海外旅行者数を回復させることが期待されるとしている。
観光庁の「アウトバウンド政策パッケージ」やJATAの海外旅行促進プロジェクトのデータがGPT-4に入っているのかもしれないが、それらを想起させる具体策を上げている。ただ、航空業界との連携が問題で、燃油サーチャージを含めた航空運賃の割高感が4つの中では課題として残る。
パッケージツアーに将来あり
新しいトレンドに適応がカギ
旅行業界としては、日本人の海外旅行が早期に回復することが最大の目標だが、アウトバウンドが回復しても、パッケージツアーの取扱量は低迷している。観光庁がまとめている主要旅行業者のパッケージツアーの取扱状況は、直近の2023年10月を見ても、19年比で取扱額24%、取扱人数18%と低迷している。
コロナが5類移行前の4月の海外パッケージツアー取扱額7.6%、取扱人数5.9%と比べると増加しているが、8月以降、ほぼ同様な状況で推移している。
パッケージツアーは仕入れの問題、ダイナミックパッケージ化などの要因から各社の取り組みが多様化しており、2024年が転換期の時を迎えているように感じられる。
ChatGPTは、日本のパッケージツアーの市場動向について、個別化されたニーズへの対応、デジタル化と技術の活用、持続可能な観光への取り組みの3点を指摘。特定の顧客の要望に合わせたカスタマイズオプションの提供、オンライン予約システム、アプリ・サービスの提供による顧客アプローチ、持続可能な旅行プランの提供で新たな市場開拓などを上げている。
パッケージツアーの将来性については、海外旅行市場が回復する中で、前述のテクノロジーの進化、個別化ニーズへの対応、持続可能な観光への取り組みなどの新しいトレンドに適応していくことを成功の鍵としている。
ChatGPTとツーリズムに関する会話を続けていくと、最も多くの回答のキーワードは、持続可能な観光とデジタルテクノロジーへの取り組みだった。全ての事業形態でこの2つが旅行・観光産業のキーワードになっている。