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九州工大、スペースプレーン実現向け1トン級機飛行実験
スペースウォーカーの宇宙機実現へ米国で飛行実証
九州工業大学の米本浩一教授は、大学発ベンチャーとして昨年12月に創業者として設立したスペースウォーカーについて、「来年から再来年にかけて、1トンクラス実験機を米国で飛行実験する準備を進めている」ことを明らかにした。ちなみに米国で実験する機体は、九州工業大学にとっては15号機目となり、全備質量が約1トン、全長4.6メートルにも達する。この実験が成功すれば、スペースウォーカーにとっても、再使用型スペースプレーンの確立に向けて、大きく前進することになりそうだ。
スペースウォーカーでは、最初の無重量実験用機体について、2022年を目処に飛行試験を実施して運用していくことを計画する。さらに、衛星投入用のスペースプレーンについては、2024年に飛行試験を実施して、2025年くらいから運用することを目指す。そして有人機については、2026年から27年に飛行試験を行うことを計画中だ。
スペースウォーカーの最終目標は有人宇宙輸送機の開発だ。民間の力で、まずはサブオービタルの有人宇宙輸送を確立することが狙いだ。宇宙先進国・米国ではヴァージン・ギャラクティックやストラトローンチのように、民間の手による有人宇宙機開発に挑む宇宙ベンチャーが誕生している。一方、日本はPDエアロスペースが有人のスペースプレーンの開発に挑んでいるほか、デブリの除去、エンターテイメントなど、多彩な宇宙ベンチャーが登場するようになってきた。
「スペースウォーカーの目指すところは、有人宇宙飛行を実施したいということ」だと米本教授。「民間でまずは宇宙空間と定義されている高度100キロメートルを超えて、戻ってくるというサブオービタルのスタイルでスペースプレーンを実用化するという目的でこの会社をつくった」ことを明かした。
スペースウォーカーでは、まずはサブオービタルの弾道飛行で無重量実験を提供することを目指す。米本教授によると、「高度100キロメートルを超えて無重量実験を提供する。本来は衛星を飛ばしたり、あるいは宇宙ステーションに色々な物資を運ぶことが無重量実験において一般的だが、それ以外にもサブオービタル飛行で数分間の無重力環境をつくり、様々な実験をするということ手段を提供することができる」という。
さらに、「無重量環境を実現するためには使い捨てロケットもあるが、せっかく作った供試体を捨てなければならない。供試体を回収する場合もあるが、捨ててしまうことが大半のケースで、それを再使用型にすれば、もう一度、自分の手で無重量実験の結果を評価することができる」との見方を示し、無重量実験を提供することの意義を明らかにした。
スペースウォーカーではその先に、小型衛星の打ち上げ市場を見込む。「500キログラム以下、100キログラム程度を低軌道あるいは太陽同期軌道に投入する」としており、最終的には「有人の宇宙旅行をするということを生業にしようと考えている」ことを明らかにした。
※画像=スペースウォーカーが開発するスペースプレーンのイメージ。まずは無重量実験用の機体を開発するが衛星投入、そして有人機と開発を進める(提供:スペースウォーカー)
※画像=無重量実験用機体は2022年を目処に飛行試験を実施予定。衛星投入用のスペースプレーンは2024年に飛行試験、有人機は2026年から27年に飛行試験を行うことを計画中だ(提供:スペースウォーカー)