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2024.05.16

WING

スカイマーク、事業収益が初の1000億円突破

 想定以上に膨らむ費用も単価上昇など奏功

 

 スカイマークが5月15日に発表した2024年3月期決算によると、力強い旅客需要を背景に、事業収益が前年同期比22.9%増加した1040億7500万円と、過去最高を更新した。同社の事業収益が1000億円の大台を突破したのは、これが初めて。
 さらに本業の儲けを示す営業利益は同35.2%増加した46億6800万円と着地した。ただ、営業利益は第4四半期の営業費用が想定以上に膨らみ、当初の見込みを下回った。経常利益ベースでは101%伸びた74億6300万円となり、最終利益では法人税等調整額の計上により、47.7%減少した29億9700万円となった。
 同日、決算会見に臨んだスカイマークの西岡成浩専務執行役員によれば、昨年度の有償旅客数は794万人に達し、コロナ前の2019年度を8%上回ったほか、前年度比ベースでも13%増となるなど、旅客需要が好調に推移した。とりわけ「レジャーおよびVFRを中心に堅調な需要だったことに加え、円安などによりインバウンド需要なども好調だった」ことを明かした。
また、洞駿社長は過去最高の事業収益を達成したことに胸を張りつつ、「当社は運航品質の磨き上げとセットで、平均単価を持続的に引き上げている」ことに言及。「当期においてもイールド・マネジメントを徹底し、適切な搭乗率を保ちつつ、前年比、目標比ともに大幅な引き上げを実現した」ことを明かした。
 スカイマークは手頃な運賃を提供しつつ、定時運航率ナンバー1など、高い運航品質を堅持することによって、顧客満足度トップをひた走っている。そうしたなかスカイマークが注力していることの一つが、イールド・マネジメントだ。
 手頃な価格、高い運航品質を最大の武器とするスカイマークだが、足下の円安・原油高などの周辺環境は強烈な逆風が吹いており、コストが想定以上に膨らんでいることも事実だ。そのため、2023年度は適切な搭乗上率を維持しつつ単価を引き上げることによって、イールド・マネジメントを徹底した。

 

※写真=事業収益が初の1000億円を突破したスカイマーク。写真は洞社長
 西岡専務によれば、2023年度の平均座席利用率は83%とのことで、「コロナ前と同程度の適切水準を維持した」という。そのなかにあっても実は「イールドについても12円、平均単価は1万2756円となり、目標対比で435円増、前年比1072円増となった」ことを明かし、平均単価の引き上げを進めたことに触れた。

 

 配当予想比8円増の29円に
 前年度比24円の大幅増配

 

 西岡専務は「これは、コロナ前の2018年度比でも大幅な単価上昇(+1227円)を実現している」とコメント。同社としては引き続き、適切な水準の座席利用率を維持しつつ、イールド・マネジメントを深掘りする方針だ。
 なお、期末配当は1株あたり29円となる見込みで、当初の配当予想21円に対し、8円の増配となった。これは対前年比では24円の大幅な増配となる。
西岡専務は引き続き、「配当方針は継続するが、財務健全性の指標となる自己資本比率40%の達成状況に応じて、機動的な追加還元を検討する」とした。

 

 25年3月期予想、事業収益は7.8%増の1122億円
 円安・原油高など費用増、イールド・コスト管理深掘り

 

 また、2025年3月期の通期業績予想では、事業収益が前年度比7.8%増加する1122億円、営業費用は同9.3%増の1087億円、営業利益は同25%減の35億円、経常利益が51.8%減の36億円、そして当期純利益は40.1%増の42億円と予想した。
座席供給量を表すASKは、ほぼ前年並みを予想しており、座席利用率も80%台前半の水準となるとした一方、イールド・マネジメントを継続的に深掘りして単価を上昇させていく方針で、レジャーおよびVFRを中心とした旺盛な旅客需要と各種施策により、前年度比81億円の増収を見込む。
 一方で円安・原油高が継続するほか、空港使用料の減免の縮小や燃料価格激変緩和策が今年6月に終了することなどを前提に補助金が縮小。エンジン整備が前縁に続き山場となるなど、さらなる費用増を見込む。また、当期純利益は繰延税金資産計上額の変動に伴って、法人税等調整額が減少する見通しにあることを明かした。
 スカイマークの本橋学専務執行役員は「2024年度は今後の飛躍的成長に向けた離陸準備の年という風に位置付け、新経営体制の下、3つの注力事項を中心に取り組む」ことに言及。具体的には新機材の導入準備、レベニューマネジメントの継続、そしてコストマネジメント強化を推進していくことを明かした。
 なお、2024年度中、約180億円(23年度:21億円)の大規模な投資を行う。具体的には、737MAX導入関連が153億円と大半を占めており、機材及び予備エンジン導入に係る前払金、フライトシミュレーターなどの費用が含まれているという。

 

 足下の環境踏まえ中期経営目標をローリング
 FDA要する鈴与Gとシナジー模索

 

 また、本橋専務が中期経営目標(2024年度~28年度)のローリングについて説明した。基本的には再上場時に掲げた中長期の利益成長戦略を継続していく方針で、中期経営目標最終年度の2028年度の事業収益は1500億円以上、営業利益150億円程度、自己資本比率40%程度を目標にしている。
 本橋専務は中期経営目標を実現するためのポイントとして、安全・定時性・顧客満足の追求のほか、国内高需要路線を中心に事業を拡大すること、そして単一機材オペレーションを強化することを掲げた。
事業環境の変化、前年度の単価向上実績を勘案して5カ年における単価引き上げペースを加速するほか、為替・原油価格の前提を更新した。
 洞社長はネットワークの拡大について、「神戸空港の発着枠拡大が25年夏ダイヤからスタートするほか、福岡空港の第2滑走路の供用開始も同じタイミングで予定されている」ことに言及。さらに、737MAX導入により、フリートが増強されることに触れ、「神戸・福岡を起点とする路線の拡大は考えている。地方-地方路線を拡大していくことを視野に入れ、具体的な検討に入っている」ことを明かした。
 また、スカイマークは鈴与ホールディングス(現在は鈴与スカイ・パートナーズ投資事業有限責任組合へ譲渡)が筆頭株主となるなど、フジドリームエアラインズ(FDA)を傘下に抱える鈴与グループとの関係が急速に接近している。
 FDAとのシナジーについて洞社長は「FDAからも社外取締役が派遣されることになり、ご指導を仰ぐことになった。そういうことをきっかけとして、互いに協力できる分野について、既に探っている」とコメント。「我々とFDAの路線は競合していないが、例えば神戸空港では、FDAが松本-神戸を運航しており、我々は神戸空港を起点にネットワークを展開している。その乗継などに関して、利便性向上の手立てなど、探っている」ことを明かした。
 さらに、資本的な結びつきを有する以前より、スカイマークとFDAは仙台空港と下地島空港においてグランドハンドリング分野で協力していることにも触れ、「こうした分野でも今後さらに何かできないか検討する余地は十分あると思う」とも話し、多面的な協力を検討していることを明かした。

 

 訪日客利用がコロナ前の「倍」に急増
 2月は全体の4.9%が訪日、羽田-札幌は15%近くに

 

 歴史的な円安などを背景に旺盛な訪日需要に沸く日本列島だが、訪日客の取り込に積極的ではなかったスカイマークにも、その余波は確かに届いている様相だ。
 洞社長によると、「パスポートチェックをしていないので、正確な数字を掴むことは難しいが、旅客の名前から判断したベースで」と前置きしつつ、「コロナ前と比較すると、外国籍と思われるお客様は、今年の1月と2月には倍に増えている」ことを明かした。
 「当社はインバウンドに積極的なアプローチをしてことなかったにも係わらず、昨年度、訪日客の利用が増加している。とくに2月は全体の旅客数の4.9%が外国籍のお客様だと思われることが分かった」として、訪日客の利用が急激に伸びているとした。なかでも「羽田-札幌線に至っては15%弱が外国籍と思われるお客様が占めている」ことを明かした。
 こうした流れを踏まえ、スカイマークは訪日客の取り込みを強化する方針で、「OTAとの連携に積極的に取り組んでいる。さらに、つい最近では、香港・台湾の旅行者をターゲットにしたSNSを開設してPRしている」とし、訪日客の利用を促進していく姿勢を示した。

 洞社長、個人的見解もあらためて国際線再参入へ意思

 

 新機材導入後、チャーターで国際ノウハウ維持へ

 

また、足下で円安環境が続くなか、外貨建て収入を増やしたいスカイマークは、引き続き、国際線の再就航を模索する。予てより洞社長は「個人的な見解」として国際線への再参入を希望していたが、あらためて国際線再参入の希望をみせた。
 洞社長は「コロナ禍でサイパン線は3カ月ほどで運休となった」ことを振り返りつつ、「会社として機関決定した訳ではないが、今後の成長戦略を考える上では国内線だけでは限りがある」と話した。
 その上で、「国際線のノウハウを維持するためにも、新機材導入以降、積極的にチャーター便を運航し、利益を上げることができる路線をみつけて、周到な準備の下、開始したいと個人的には思う」とした。
 次期社長に就任する本橋学専務は「まずは新機材を導入し、主要空港におけるビジネス拡大チャンスを着実に実行する」としつつ、「その議論のなかで、国際線がどう位置付けられるかということも議論していく。財務的には回復途上であり、しっかりと収益を上げるためにどのような手法がいいのか、バランスをみながら検討していきたい」と話した。