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2018.12.07

WING

三菱重工、デュアルユース技術でセキュリティ事業本格化

無人機・衛星データ・サイバーで5-10年先に「可能なら数百億規模に」

 三菱重工が、無人機システム、衛星データ利用、そしてモノの制御系に対するサイバーセキュリティといったセキュリティービジネスを本格化する。
 防衛・宇宙セグメント先進システム事業推進部の江口雅之部長が、「3年先に各アイテムは売上ベースで数億円レベルの事業に育て、3つの分野あわせて2桁(数十億円レベル)の下の方のビジネスにすることができれば。そして5-10年先には2桁の上の方、可能であれば3桁(数百億円規模)にしたい」と話し、セキュリティ事業を拡大していくことを目指す方針を明かした。とりわけ海外市場の取り込みを狙っており、「当社の売上構成は海外が半分以上。(セキュリティ事業も)基本的には海外。売上構成に応じて海外を意識している」という。
 三菱重工は陸・海・空・宇宙からサイバー空間へ事業領域を拡大し、安全・安心のトータル・ソリューションを提供するということを、事業計画の一つに掲げている。そのなかで防衛・宇宙セグメントとしては、従来から取り組んでいる防衛装備品およびロケットなどの宇宙製品の技術や知見を使って、デュアル・ユース、つまり民間に転用することができるような周辺事業を育てることで、安全・安心のトータル・ソリューションを提供することを目指し、会社の売上増に貢献する狙いだ。
 江口部長も「セキュリティビジネスは右肩上がり。様々な要因が考えられるが、途上国が経済的にゆとりが生まれ、多彩なセキュリティ製品が必要になってきていることも背景にある」と、セキュリティ市場の今後の更なる成長に期待を寄せている。
 三菱重工はセキュリティ事業でとくに民需の取り込みを狙っていくが、その成否の鍵を握りそうなのが開発スピードだ。防衛宇宙セグメントの顧客主体である防衛省・自衛隊や宇宙航空研究開発機構(JAXA)と進めるプロジェクトと、民間市場で求められるスピードの差は大きい。
 江口部長「全てを自前で開発する時代は終わっている。無人機もそうであろうし、サイバーセキュリティにおいても、様々な強みを有する色々な会社が存在する。基本はそれを組み合わせることが、デジタル製品の主流だ」とし、他社と連携を進めることで、開発スピードを上げていくことを示唆した。

 

三菱の技術活かした無人機システム

 

 三菱重工が開発を進めている無人機システムは「CoasTitan」。沿岸警備や国境警備、重要施設周辺警備、さらには施設のメンテナンスなど、様々な用途を想定しているが、三菱重工では「まずは沿岸警備を想定してみた」として、同社が長崎に有する実験場で実証実験を実施した。
 昨今では、テロリスト、不法移民問題、密輸、海賊、密漁など沿岸部でリスクが多様化している一方、警備範囲が広域に亘ることから人員が不足したり、あるいはテロリストの武装が強化されていることでミッションの危険性が増大。さらには対処しなければならない問題が多様化するものの、それらに対応することができる器材が乏しいことが現状だ。
 そこで三菱重工は自律型無人機による広域常時監視によって人員不足をカバーしたり、無人化することでミッションリスクを低減。空中、水上、水中に及ぶ無人機のネットワーク化で器材不足に対処するといったソリューションを提供することを目指す。
 「CoasTitan」は「地上には指揮所、地上レーダを設置して、空中のドローンのような無人機、水上の無人機、さらには弊社の一つの得意技術である水中無人機を組み合わせて、カメラでみたり、ソナーで目標を捉え、それらをネットワーク化して全てのデータを指揮所に集めて情報を解析する」(江口部長)という構想だ。目標をレーダーで検知し、コンピューターで追尾し、オペレーターにアラートを発出。オペレーターがスイッチを押せば、無人機が発進し、カメラやセンサーなどを使って目標を識別する。

 

※写真=三菱重工が民間市場向けの無人機システム、衛星データ利用、モノの制御系のサイバーセキュリティといったセキュリティビジネスを強化する。無人機システム「CoasTitan」ではプロドローンと組んで開発を進めている。写真は江口部長