記事検索はこちらで→
2024.09.04

WING

第208回「日本が危ない」〝新しい時代の戦争”へ準備は万全か

元米軍トップと資産家の論文
米国の対応遅れに危機感

 

 「アメリカは未来の戦争の準備ができていない そして彼らはすでにここにいる」――との刺激的なタイトルがついた論文が米誌フォーリン・アフェアーズ(電子版)でこのほど公開された。しかも、執筆者が米軍制服組トップの統合参謀本部議長だった退役陸軍大将マーク・ミリーとグーグル元会長のエリック・シュミットというから一層注目されている。今回はこの論文を紹介したい。
 ミリーは2019年から23年まで統合参謀本部議長を務めた。日本との間では自衛隊トップの前統合幕僚長、山崎幸二との間で信頼関係を築いた。シュミットは2017年に会長を退任して以降、200億ドル(約3兆円)もの個人資産を使って活動を続けるとともに、米国防総省の人工知能(AI)プロジェクトの相談役としても活動している。
 論文は「ウクライナの戦場においては、未来の戦争が急速に現実のものになりつつある」との書き出しで、ロシアとウクライナの双方が多数のドローン兵器を使って、戦っていることを例示した。
 新しい技術が戦争の性格を変えつつあるのはウクライナ戦争だけでない。ガザ、ミャンマー、スーダンにおいても、戦闘にドローンとアルゴリズムを使用していることからもわかる。例えば、イスラエル軍はAIアルゴリズムに接続された数千機のドローンを使っている。アルゴリズムは軍のデータを最新のクラウド・プラットフォームに集め、プラットフォームが提供する機械学習サービスを利用してそのデータを分析することだ。
 イスラエル軍は「The Gospel(福音)」(イスラエル名「Habsora」)と呼ばれるAIターゲティングプラットフォームを使用している。ドローンや衛星、監視カメラなどから収集した映像、携帯電話などを通信傍受した通話記録、「ピコセル」と呼ばれる狭い地域をカバーする小型セルラー基地局から得られた情報をもとに、人間の「分析官」に対してお勧めの「標的」を推奨するシステムだ。
 第一次世界大戦で、戦車や固定翼機が初めて実戦に投入されたように、戦争によって軍事技術は大きく進歩してきた。ミリーとシュミットは「今日の変化は異常に急速であり、これまでのよりもはるかに大きな影響を及ぼすだろう」との見通しを示した。
 つまり、これからは戦争を支配するのは最強の戦闘機、戦車ではなく、「自律的な兵器システムと強力なアルゴリズム」になるというわけだ。

 

AIとロボットが仕切る戦争
戦場の中心地は都市部へ

 

 ここに米国の弱点があり、国防総省の取組みは遅すぎるとミリーらは警鐘を鳴らす。対照的に、ロシアはウクライナにおいてAI搭載ドローンを実践配備し、中国は4月の軍再編で、テクノロジー主導型の部隊配置構築に着手している。

 

※写真=ウクライナの主戦場は空と陸だが、台湾では陸・海・空の無人システム活用を見込む

お試し価格で全文公開中