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2018.12.21

WING

防衛省予算、新大綱・中期防初年度は防衛関係費5兆70億円

F-35AのFACO断念等で概算から2856億円削減

 防衛省は12月21日、2019(平成31)年度予算案を発表した。防衛関係費は5兆70億円で、前年度予算と比べて1.4%(682億円)増で、7年連続増加となり過去最高の要求額となった。なお概算時は前年度予算と比べて7.2%(3538億円)増加となる5兆2926億円であり、F-35Aの日本国内での最終組立・検査:Final Assembly & Check Out(FACO)の断念や、イージス・アショアの構成品の見直し、概算要求時2機+長納期部品だったE-2Dを9機一括購入へ変更するなど、概算時点から2856億円削減したものの、調達機数等の内容で大きく変化した事項はないとのことだ。
 2019年度予算要求の防衛関係費のうち、人件・糧食費は0.1%(19億円)減の2兆1831億円を要求することとし、物件費が2.5%(701億円)増の2兆8239億円を求める。また、物件費のうち歳出化経費が4.8%(841億円)増の1兆8431億円で、一般物件費が1.4%(141億円)減の9808億円とした。新規後年度負担では、20.4%(4074億円)増の2兆4013億円であり、うち従来分が12.5%(2455億円)増の2兆2121億円で、長期契約分がPAC-3ミサイル用部品の包括契約として30億円、早期警戒機(E-2D)の取得で1862億円と594.9%(1620億円)増の1892億円となった。さらに、SACO関係経費、米軍再編関係費のうちの地元負担軽減分、新政府専用機導入経費を含めた場合、防衛関係費は1.3%増の5兆2574億円、新規後年度負担は21.8%増の2兆5781億円の要求となった。
 防衛省は新大綱・中期防初年度となる予算要求で、真に実効的な防衛力として「多次元統合防衛力」の構築に向けて防衛力整備を着実に実施するとした。必要となる領域横断作戦を実現するため、優先的な資材配分や科学技術の活用により宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力の獲得・強化や、海空領域における能力、スタンド・オフ防衛能力、統合ミサイル防衛能力、機動・展開能力を強化すること、日米同盟・諸外国との安全保障協力を強化すること等を掲げ、あらゆる分野での陸海空自衛隊の統合を一層推進し、組織及び装備を最適化するとした。また格段に厳しさを増す財政事情等を勘案し調達の効率化・合理化を徹底していくとしている。

 

「いずも」型改修の調査研究で7000万円新規要求
STOVL機運用能力を持つ「多用途運用護衛艦」に

 

 中期防においてSTOVL機運用に必要な改修を行うとされた「いずも」型については、改修に向けた調査研究を行うこととなり7000万円を新規要求する。具体的な内容としては、STOVL機が着艦する際の熱や音が船内の機器や人に与える影響について調査するとのこと。
 同調査結果を踏まえた上で、「いずも」型護衛艦の改修を行い、STOVL機が発着できる機能を追加する。本来の多用途護衛艦の役目は維持することになり、対潜戦、輸送などの任務を併せて行うため、防衛省では攻撃的な空母として運用しないと説明している。また、今後搭載可能とするSTOVL機については、F-35Bが最有力機ながら、機種選定のプロセスを行った上で機種を決定するという。

 

F-35Aは国内組み立て断念し調達費用圧縮
F-15プレMSIPをF-35Aで更新、STOVL機も含む

 

※写真=F-35Aは6機要求から変更はないが、取得方式を国内のFACO調達から完成機引き渡しに変更した(提供:航空自衛隊)