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2024.10.11

WING

第210回「日本が危ない」“持ち込ませず”は平和につながるか

 

中国は第三の核大国へ
拡大抑止は冷戦思考か

 

 中東パレスチナ自治区ガザでの紛争などへの対処のため、インド太平洋地域に米空母の不在が続いたなかで、中国軍の動きが活発化している。8月下旬には中国軍の偵察機が初めて日本の領空を侵犯したほか、9月には空母「遼寧」が日本の接続水域を航行した。日本では自民党総裁選、米国では大統領選が行われている「政治空白」を狙ったともいえる。そうした表の動きとは別に、中国軍は核戦略も「最低限抑止」から「相互確証破壊」へと変化させようとしている。今回は中国軍の核戦力について特集する。
 米国の「核の傘」を含め日本への攻撃を敵国に思いとどまらせる「拡大抑止」に関し、初めての日米両国の外務・防衛担当閣僚による会合が7月下旬に都内で開かれたことは本紙で紹介した。これについて中国側はさっそく反応した。
 外務省報道官の林剣は7月30日の会見で「中国は核兵器の先制不使用という政策を固く守り通しており、自衛と防御目的に徹した核戦略を守り、自国の核戦力を終始国家の安全保障上の必要最低限のレベルに維持し、いかなる国とも軍拡競争を行わないことを堅持している」との中国のこれまでの立場を強調した。
 そして、日米の動きを「冷戦思考」と非難し、日本に対しては「戦略的安全保障政策を自省し、核兵器不拡散条約に規定された非核保有国の義務を適切に履行し、非核三原則の約束を遵守し、いかなる形でも核兵器を求めないように促す」と述べたのだった。
 さらに、中国国防部報道官の呉謙は8月29日の記者会見で、「米国が存在もしない『中国核脅威論』を口実に核配備を拡大し、核軍縮に対する自らの責任を転嫁することに断固反対する」と米国を批判した。

 

1年100発も増加する核弾頭
地上中心に潜水艦が補完

 

 もっとも、欧米の見方は当然のことながら異なる。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は6月に出した年次報告書で、中国の核兵器保有数が昨年大幅に増加し、向こう10年で米国やロシアに匹敵する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を配備できるようになる可能性があると発表した。同研究所の上級研究員ハンス・M・クリステンセンは中国について「他のどの国よりも急速に核兵器を増強している」と警鐘を鳴らした。

 

中国は早いペースで核配備を拡大している

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