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2024.10.17

ウイングトラベル

★持続可能な観光地トップ100に日本から5地域

 釜石7年連続、宮津2年連続、千曲・遠野・手向

 

 観光地の国際認証団体「グリーン・デスティネーションズ」が選定する2024年「世界の持続可能な観光地100選」に、日本から岩手県釜石市、遠野市、長野県千曲市、山形県鶴岡市手向(とうげ)地区、京都府宮津市の5地域が選ばれた。釜石市は7年連続、宮津市は2年連続の選出。その他は初選出で、昨年の10地域から5地域に減った。
 遠野市は遠野ふるさと商社が応募した市独自の地域遺産制度「遠野遺産」が、「文化・伝統」部門で初めて選ばれた。遠野市では、国や県から保護指定を受けていない文化財を地域住民が自らの力で保護する必要があった。しかし、人口減少や生活様式の変化により、住民だけの努力では限界があった。
 そこで、2007年に遠野市は「遠野市文化財認定条例」を制定し、市民からの申請に基づき地域資源を「遠野遺産」として認定し、地域協力を通じた保護と活用を促進する制度を導入した。現在までに169件が「遠野遺産」として認定されており、この取り組みにより、地域住民の文化・自然保護活動への参加が増加し、遠野遺産が観光資源としても認知されるようになった。
 釜石市は釜石DMCが応募した「観光教育の推進を通じた地域への愛着の醸成」が「活気ある地域社会」で7年連続の受賞。釜石市は人口減少に伴う労働力不足と、若い世代の地域への愛着が希薄という課題に直面し、地元の学生に地域の魅力や観光業の将来について学ぶ観光教育を提供し始めた。
 観光教育を推進する釜石DMCは、地域内のさまざまな業界のキーパーソンとネットワークを構築し、連携を深めている。また、地域産業に焦点を当てたプログラムを設計し、学生が地元での就職やキャリア形成について考える機会を提供。この取り組みは観光庁により高く評価され、日本国内の観光教育を推進する3つのモデル地域のひとつに選ばれている。学生たちの地域貢献意識も高まりつつあるという。
 千曲市は信州千曲観光局が応募した「NEOネオン」〜地域と未来をつなぐプロジェクト〜が、「活気ある地域社会」部門で選出された。千曲市の戸倉上山田温泉には70軒以上のスナックが今も営業しており、レトロなネオン看板が温泉街のアイデンティティを確立している。しかし、観光スタイルの変化や高齢化に伴う観光客減少により、運営が難しくなっている現状がある。
 この文化を守り、維持するため、信州千曲観光局は「NEOネオンプロジェクト」を立ち上げ、温泉街のスナック文化を活用した取り組みを開始した。これにより、温泉街のアイデンティティを確立し、地域コミュニティの維持を目指している。
 鶴岡市羽黒町手向地区は手向地区自治振興会が応募した「信仰と観光を基盤とした峠地区のまちづくり」が「文化・伝統」部門で選定された。
 峠地区は、日本の「生きた山岳信仰遺産」の一つで、1400年にわたり巡礼者を迎え入れてきた地域。しかし、地域の文化財の保護に関して外部と内部で認識の違いがあることや、観光開発に伴う地域活力の低下といった課題に直面している。また、地域住民が保存したい文化財が法的に保護対象とならないケースも存在する。
 こうした課題を受け、峠地区は「信仰と観光を基盤とした開発」というコンセプトのもとで地域再生ビジョンを策定し、地域の文化・伝統の保存を目指したまちづくりを進めている。
 宮津市は、「世界で最も美しい湾」を守る(宮津湾保全)の取り組みで選ばれた。宮津市は「SDGs未来都市」づくりに向けサステナブルな観光をめざしており、トップ100選に昨年度に引き続き選ばれたことは、欧米豪市場への誘客に向けたアピールになると期待した。
 また、同時に、「トップ100」の名に恥じぬよう、観光誘客と受入体制づくりのバランスを取りながら、国際基準項目クリアに向けた取組みを続けていきたい。その先にはゴールの『観光客、地域の誰もが満足でき、未来に繋がっていく観光地』に繋がるものと考えている」とコメントした。
 今年の「世界の持続可能な観光地100選」には45か国から170件以上の応募があり、129件の取り組みが提出された。その中から32カ国からトップ100が選ばれた。授賞式は12月にチリで開催予定。
 また、来年3月に開催されるITBベルリンで、2024年版のトップ100選の中から、年間「グリーン・デスティネーションズ・ストーリー・アワード」の選出される予定。

※表=2024年「世界の持続可能な観光地100選」
http://jwing.net/t-daily/pict2024/2410/1017gd.jpg