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2024.11.13

WING

防衛装備庁、来年11月ごろAI搭載無人機初飛行へ

 戦闘型・偵察型の試作、26・27年度に飛行試験

 

 防衛装備庁は11月12日、現在研究を進めている無人機へのAI搭載技術の研究試作で、実験用航空機(Flying Test Bed:FTB)や管制装置などを試作し、試験的に開発したAIを実装させた上で飛行試験を行うなど、内容を明らかにした。FTBの初飛行は来年度11月に行う予定で、26・27年度には所内で飛行試験を行って、AIからの指令に基づく飛行を実証していく構えだ。
 この無人機へのAI搭載の研究について、詳細は装備庁が都内ホテルで開催した「技術シンポジウム2024」のセッションで発表した。登壇した装備開発官(航空装備担当)付第2開発室長の池田通隆1等陸佐によると、22年度から同研究を開始して、23年度末にはシステム設計と関連試験を終え、今年度は細部設計に取り組んで年度末にも完了する見込みだという。来年度からは、実際にFTBなどの製造に着手することになるとした。

 

※写真=「技術シンポジウム」のセッションで公表したFTBイメージ図。左が戦闘型で右が偵察型
 実証試験で使用するFTBは、戦闘型の機体と偵察型の機体の2機を製造する予定。エンジンと胴体は共通のもので製造し、主翼などをモジュールとして交換を容易に行えるようにする。そうすることで、複数の機体の形態を用意できる。センサなども用途ごとに専用のものに載せ替えるなどして、効率よく複数の任務を模擬した試験を行う。搭載するコンピュータは一般的な規格のもので柔軟な対応が取れるようにする。機体サイズは3メートル前後の計画だという。
 26・27年度に行うFTBの飛行実証では、運用を模擬したパターンで飛行を行い、AIが学習するシミュレーション環境と、実際の飛行環境の差異を把握していく考え。さらには同一のFTBで異なるAIを実証することで、AIの差異による影響などを確認していく。またAI搭載無人機の安全性確保の技術確認を行っていくという。

 

 戦闘型ではミサイル発射動作も学習
 他研究と連携して十分な成果獲得へ

 

 実施する試験のイメージは、特に戦闘型の機体には武器などを搭載しないが、行動判断を学習させるためにミサイルを発射する動作を組み込んでAIに学習させていく。仮想の敵機を用意して空対空戦闘を行わせる。まずは1対1で飛行試験を行い、次の段階では2対2へ数を増やすなどしてステップアップを図っていく。
 異種AI搭載の実証については、異なる企業が開発したAIや、異なる性能のAIなどを載せ替えることで、飛行特性などの変化を確認していく。さらに行動判断の差異なども見ていく。もしも用途別に得意、不得意があれば、十分にデータを取って、実用化の際に反映して能力向上に寄与する考え。
 さらに関連研究との連携は必須で、単独の研究のみでは十分な成果を得ることはできないという。例えばほかの研究で、戦闘支援AIをつくる研究が進められているが、この研究でつくられたAIを搭載して実証を行っていくという。この研究では、味方側が相手側の航空機を撃墜して戦闘に勝利できる行動をAIに習得させることを目指している。味方側のAIがセンサ情報から環境を観測し、理解した上で行動を決める。さらに変化した状況を把握して最適な行動を取る、といった戦闘に必要な一連の行動をAIに習得させる。こうした同時に進む関連研究と連携して実証を進めていくとした。
 また、前述したAI搭載無人機の安全性確保についても、関連する研究と連携することで対応していく。この研究では、空中衝突や地面への衝突など、AIの危険公道を検知したとき、危険回避用のバックアッププログラムに切り替えて安全性を確保するというもの。AIの行動は学習内容に依存する特徴があり、AIが取る行動を完全に予測することができないため、安全性を保障するバックアップを用意して対応していく考えだ。