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★リクルート、オーバーツーリズム調査結果発表
人材不足と地域間連携が観光客分散化のカギ握る
リクルートが運営する「じゃらんリサーチセンター(JRC)」は、全国観光地のオーバーツーリズム問題と観光客の分散・平準化に関する調査結果を発表した。同調査は自治体や観光協会、宿泊施設や交通事業者などを対象に、観光客増加が地域社会や観光業に及ぼす影響を分析し、今後の対策の方向性を示した。調査結果から観光客の分散を進めるためには、人材不足の解消と地域間連携の強化が主要な課題であることが浮き彫りになった。
同調査によると、観光地での混雑を「感じている」と回答した割合は、生活エリアで約60%、業務エリアで63%に上った。一方で、観光客の増加が業務面での経済効果をもたらしていると回答した割合は75%に達したが、生活面での好影響を実感している人はわずか52%にとどまった。この結果は、観光業が地域経済に貢献する一方で、住民の日常生活におけるメリットが限定的であることを示した。
また、過半数の回答者が「生活圏の雰囲気の変化」や「旅行者のマナーの悪さ」を課題として挙げた。特に関西や九州・沖縄では、生活圏の変化への不満が顕著であり、関東では物価や飲食店の価格上昇が問題視されている。地域ごとに感じる課題が異なる点も明らかになった。
調査では、混雑緩和のための対策として「交通渋滞の解消」や「公共交通の輸送力向上」が重要視される一方で、これらの実行が困難であると多くの回答者が認識していることが分かった。一方で、「インバウンド旅行者や国内旅行者へのマナー啓発」は、実施のハードルが比較的低く、早期に取り組める対策として注目された。とくに、交通インフラ整備や広域的な連携が求められる課題については、地域単独では解決が難しい状況にあり、分野横断的な連携の必要性が高まっている。
観光客分散を阻む主要な理由として、「人材の不足」や「エリア間の連携・役割分担の困難さ」が挙げられた。とくに、広域的な連携には多くの関係者が関与し、それぞれの利害調整が難しいケースもあるが、DMOを中心とした成功事例も増えているとした。
同センターの長野瑞樹研究員は、「観光客の分散や誘客を進めるには、地域間の協力と、観光地を取り巻くステークホルダーが連携して課題に取り組む姿勢が求められる」と指摘。観光地間の競争から協力へと意識を転換し、持続可能な観光地づくりを目指す必要性を強調した。
同調査では、京都府と周辺エリアの連携による「御食国(みけつくに)」事業や、関西・中国・四国地域を統合した広域観光モデル「Greater WEST JAPAN」などの事例を紹介。これらの取り組みは、観光客を広域に誘導し、特定地域への過剰な集中を回避する好例として注目されるとした。
※写真=リクルートがオーバーツーリズムの課題を調査(イメージ)