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木村化工機、地産地消型国産SAF供給網構想
名大開発のソルガム「炎龍」、耕作放棄地利用で地域に寄与
SAF(持続可能な航空燃料)原料用バイオエタノールを蒸留する際のCO2排出をゼロにする新型「ヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置」を開発した木村化工機が、同社の国産バイオエタノールの生産構想を明らかにした。
木村化工機エンジニアリング技術1部の中西俊成次長によれば、バイオエタノールの原料としては、バイオマス量が多く食料と競合しないソルガムを使用する。具体的には名古屋大学が開発した「炎龍」が有望だとし、糖化アルコール発酵工程において、酵素の使用量を大幅に削減可能な水熱処理技術を活用するほか、エネルギー消費の多い濃縮工程では同社が開発した「ヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置」によって、エネルギー消費量を大幅に削減することを明かした。
また、中西次長は「空港を中心とした地域サプライチェーンの構築が必要だ」とし、「地方で栽培されたソルガムを千葉で搾汁・製粉し、中堅都市に建設するバイオエタノールプラントに集める。そしてバイオエタノールは製油所に輸送し、SAFに変換した後、近隣の空港で航空機へと給油する」、いわゆる地産地消型のSAFサプライチェーンの構築を目指すことを明かした。
中西次長はこの地産地消型のSAFサプライチェーンについて、「休耕地の有効利用から地方経済の活性化にも貢献できる」とコメント。さらに、「現在、日本の各所には多くの空港が点在する。空港の近くには製油所がある。例えば、関東地方でイメージすると、まず千葉県には精油所があり、成田空港がある。また、1万ヘクタールを超える耕作放棄地があると言われており、今後も増加傾向にある」ことに言及し、「多くの化学工場も存在し、その構内の遊休地にバイオエタノールプラントを建設するのが理想ではないか」との考えを明かした。
加えて製粉工場やバイオエタノールプラントでは、化石燃料を使用しない電化構成とし、再生可能エネルギー由来の電力で操業することで、理想的なカーボンニュートラルが達成することができるとした。
※この記事の概要
・ 「炎龍」、1haで最大約7トンのエタノール収量
水熱処理技術で高価な酵素使用削減
・製造コスト、1Lあたり70円目標
生産拡大には二期作・ハウス栽培も など
※写真=イネ科のソルガムを品種改良した「炎龍」(提供:名古屋大学)