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第213回「日本が危ない」『大変な時代」はすぐ目の前だ
米国の新大統領にドナルド・トランプが当選した。現在78歳のトランプが2期目にどのような政策を打ち出してくるのか、各国とも戦々恐々としている。日本も例外でない。元首相、安倍晋三が存命ならば第1期の時に世界がうらやむほどの蜜月関係を築いただけに、日本として心配する必要なかったが、もはや安倍はこの世にいない。いかにトランプ新政権と向き合うべきかを考える。
第2期トランプ政権発足へ
関係国との連携やいかに
トランプが真っ先に手掛けた人事が首席補佐官に選挙戦の選対本部長を務めたスーザン・ワイルズを起用したことだった。ワイルズは67歳。16年と20年の大統領選でもトランプ陣営で選挙戦略を担当するなどトランプを支えてきた。史上初の女性首席補佐官となるワイルズに対するトランプの信頼は絶大だ。
続いて、トランプは第一次政権で要職に就いていた元国連大使ニッキ・ヘイリーや、元国務長官マイク・ポンペオを閣僚として起用しない方針を示した。わざわざ入閣させないと表明するのは異例のことだ。トランプは上院議員マルコ・ルビオを国務長官、元陸軍州兵でFOXテレビ司会者ピート・ヘグセスを国防長官、下院議員の退役陸軍大佐マイケル・ウォルツを大統領補佐官(国家安全保障問題担当)にそれぞれ指名した。カリスマ軍人よりも忠実な人たちを優先した格好だ(11月末当時)。
トランプの外交・安全保障政策を構築してきたのは、主にポンペオらのグループと、ワシントンのシンクタンク「米国第一政策研究所」(AFPI)に分かれていたが、「第一政策研究所」の力が強まることが予想される。ワシントンの情報筋によると、ワイルズもポンペオらよりも「第一政策研究所」のほうに近いという。
同研究所はトランプが第一次政権から退陣して3ヵ月後の21年4月に設立された。今年6月、台湾を訪問していた第一政策研究所安全保障センター副所長のフレッド・フライツと、同研究所上級研究員のスティーブ・イエーツが訪日し、都内のシンクタンク「国家基本問題研究所」(国基研)と、防衛省近くの戦略研究フォーラムを訪れた。
フライツは前政権で国家安全保障会議(NSC)首席補佐官兼事務局長、イエーツは元副大統領ディック・チェイニーの次席補佐官を務めた経験を持つ。
国基研のホームページによると、フライツは新政権が誕生した場合、「不必要な戦争に踏み込まず慎重に扱う。同盟国と緊密に協力して重みを応分に負担する。特に北大西洋条約機構(NATO)の軍事費にドイツやフランスなどが応分の分担金を払わないことを懸念する。ウクライナ戦争はヨーロッパの軍事衝突なのだから、西欧がウクライナを武装すべき問題としてとらえるべきである」と述べ、NATO側が軍事費を増額すべきとの考えを強調した。
たった5分の良好な関係
中国とは対抗姿勢へ
日米関係については「トランプ大統領と安倍元首相がかつてないほど良好な関係を築いたように、日本との関係を再び大切にするだろう」と楽観的な見通しを示した。フライツらが来日したときはまだ岸田文雄政権だった。9月の自民党総裁選で、安倍の「政敵」だった石破茂が首相になったことを、トランプ側近らは冷ややかにみている。
強いリーダーシップを持った対話が期待される(共和党HPより)