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アストロスケール、中間純損失が129億円超に
プロジェクト遅延影響、収益のタイミングにズレ
スペースデブリ除去を含む軌道上サービスの展開を目指すアストロスケールホールディングスが12月13日に発表した2025年4月期上期(5~10月期)決算によれば、中間純損失が129億4699万9000円と、前年同期の29億2967万9000円から、損失が大きく膨らんだことが明らかになった。売上収益も7億2578万5000円と、前年同期の12億2736万3000円から縮小した。
同日、会見に臨んだアストロスケールの松山宜弘最高財務責任者(CFO)は上期決算について、「ポジティブ要因は経費が想定以下であったこと、第2四半期のフリー・キャッシュ・フローがプラスになったこと、健全なバランスシートを維持できていることだ」と振り返りつつ、その一方で「新規受注や既存プロジェクトの遅延により想定を下回る収益認識となったことがネガティブ要因だ」と説明。「新規プロジェクトは失注ではなく、あくまでタイミングのズレ。契約に向けて明確に進展しており、引き続きLEXI-P案件からの大きな収益貢献を今期中に見込む」とした。
※画像=アストロスケールの中間決算は純損失129億円で着地。プロジェクト遅延が響いた(提供:アストロスケール)
また、上期の受注高は154億8100万円にのぼっていることを明かしつつ、プロジェクト収益は前年同期の約2倍となる25億2000万円(前年同期:12億5200万円)となったこと明かした。このうち施シフ補助金収入は17億9400万円、売上収益は7億2500万円だった。
松山CFOは「売上収益のみ見ると減収だが、プロジェクト活動から得た収入は大きく伸びている」との見解を示した。プロジェクト収益の増加は「プロジェクト収益の増加はCOSMICフェーズ2とADRAS-J2の収益認識開始による効果」とのことで、「これらのプロジェクトはまだ初期段階だが、今後も活動が活発になることに伴い収益が増加することを期待している。第4四半期にはLEXI-PやProject Aの収益認識開始も狙っている」ことを明かすなど、下期にかけてさらなる増収が見込まれることに触れた。
売上原価については50億6700万円(同:15億8500万円)に膨らんだものの、「売上原価は想定通り。販管費は想定を下回る水準で着地した」ことを明らかにした。
販管費について松山CFOは「研究開発費の増加は補助金案件の開発費用とLEXI-Pに掛かる先行開発費用が主要因。いずれも想定通りに推移している」と説明。「研究開発費以外の販管費は昨年から増加しているが、想定を下回る水準で推移している。その他の収益では政府補助金収入のほか、英国での研究開発費に関する税制優遇制度による税金還付4億円を計上致した」ことを明かした。
岡田CEO、軌道上環境はさらに悪化
上期155億円受注、防衛需要が先行
また、決算会見に同席した岡田光信最高経営責任者(CEO)は「稼働衛星数、デブリの数ともに増加している」と話し、軌道上の環境は悪化していることに言及。「低軌道における役目を終えた衛星の軌道離脱成功率は約60%。つまり4割はデブリとして残っていることになる」としたほか、「衛星やロケット上段等の深刻な破砕は上期において少なくとも5回起きており、細々としたデブリが発生している。そうなると除去することも避けることもできない」とした。
今年8月6日には中国のCZ-6Aロケット上段が破砕し、低軌道上に283個ものデブリが発生。翌9月6日には米国のATLAS5ロケット上段が破砕し、高度楕円軌道上に40個以上のデブリが発生した。そして10月19日には静止軌道上で米国衛星の破砕が発生し、500個ものデブリが生まれたとされている。
岡田CEOは「観測できるだけで毎回数十から数百のデブリが発生している。観測できないサイズのデブリはもっと多数発生していると考えられ、わずか1ミリ程度の破片でも、秒速数キロメートルで飛んでおり、衛星を破壊するほどの力を有している」と、宇宙環境の悪化に警鐘を鳴らした。
岡田CEOは「事業は順調に伸びている」ことを強調しつつ、上半期で154億8100万円の新規の受注を獲得したことに触れ、「当社の大きな特徴として、グローバルに案件を獲得していることだ。日・米・英のオフィスそれぞれで複数プロジェクトを進めており、合計の受注残高は276億4800万円」にのぼっているとした。
また、当初想定した軌道上サービス市場の成長に、やや変化がみられていることに言及した。
「民間案件よりも防衛関連案件のニーズの具体化が先に顕著になってきた」ことに触れ、「今後、宇宙環境の把握や燃料補給といったロジスティクスサポートとしての軌道上サービスが具体化すると考えている」とコメント。「米国で燃料補給衛星を受注しているのは従前よりご説明しているとおりで、具体的な事業機会候補が見え始めており、当社は日本では三菱電機、英国ではエアバスなどと提携を結んでおり、こうした防衛関連事業が伸長していくものと考えている」との認識を示した。
通期業績、プロジェクト収益を120億円に下方修正
当期純損失185億円見込む
通期業績予想について松山CFOは「未契約案件の契約締結時期遅延により、プロジェクト収益の通期予想を期初の180億円から120億円に修正した」ことを明らかにした。
その一方で「原価も同様に低下するため、売上総利益は当初想定通り損益分岐水準を見込んでおり、利益への影響は限定的だ」と説明。こうした結果、通期の営業損失は170億円、当期損失185億円を見込むとした。