ウイングトラベル
★旅行業界年頭所感、海外旅行は今年が正念場
万博開催で旅行需要全体の高まりに期待
旅行各社トップの年頭所感では、コロナ禍を経て、旅行事業が新たな時代に入ったことを浮き彫りにしている。「旅路を超えて培った知見と経験」で「交わる先に、新たな未来」があるというJTBの山北栄二郎社長の言葉が印象的だ。各社ともに未来を見据えて変化、挑戦を続けていく。各社ともに、海外旅行の回復が遅れている中で、4月から開幕する大阪・関西万博を契機に旅行全体の需要が高まることを期待する。
一方で、海外観光局サイドは日本市場の回復に向けて、旅行業界との関係性を重視する。円安や現地物価高、燃油サーチャージの高止まりなどのマイナス要因はあるものの、2025年は日本市場のポテンシャルに期待する。ただし、今年もアウトバウンドが低迷を続けると日本市場に対する見直しが加速する懸念もあり、海外旅行は今年が正念場となりそうだ。(編集部)
■旅路を越えて『交わる先に、新たな未来。』
JTB代表取締役 社長執行役員 山北栄二郎
昨年は、日本代表のメダルラッシュに沸いたパリでのオリンピック、パラリンピック競技大会や、米大リーグでの大谷選手の活躍など、スポーツによってもたらされる感動に心が打ち震えた方も多かったことと存じます。訪日旅行は過去最高の訪日外客数を記録、国内の主要観光地は国内外からの観光客で大いに賑わいをみせ、新しい交流の世界を改めて実感する1年でありました。
サステナビリティの観点では、持続可能な旅行と観光のための国際標準を策定・管理するグローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(The Global Sustainable Tourism Council® 、以下「GSTC」)が認定した第三者国際認証機関の1つBureau Veritas(本社:フランス)より、国内ツアーにおいてGSTCツアーオペレーター認証を取得しました。私たちの現状の取り組みを客観的に評価いただいた結果であり、この認証は大変価値があるものとして受け止めています。
さて、IMF世界経済見通しによると、世界全体のGDP成長率は昨年よりは上向くことから、今年もグローバルな交流は成長を続けると捉えています。当社は本年も引き続き「未来から現在(いま)を創る」をテーマに掲げ、交流創造を通じてお客様の実感価値向上と地域の持続的な発展に貢献すべく、多様なステークホルダーとの共創やビジネスモデルの進化を進めてまいります。
当年は「汽車時間表」として創刊したJTB時刻表が100周年という大きな節目を迎え、4月にはいよいよ「大阪・関西万博」が開幕します。観光をはじめ、教育、文化、スポーツ、学術、ビジネスなど様々な目的で国内外から多くの人々が来訪することで交流人口の拡大が期待され、大阪を起点とした日本全国への回遊は訪日客の地方分散の機会にもなります。
地域観光資源の掘り起こしや磨き上げ、一部地域のオーバーツーリズム課題に対する旅行消費額の拡大、地方誘客、持続可能な地域づくりの加速を進めてまいります。世界旅客数は前年比10%増の95億人に達すると予想されています。グローバルでの人流も著しい伸長が見込まれ、当社も企業イベントや国際会議などを通じ、世界各国のお客様の課題解決プロセスに寄り添いながら、顧客のエンゲージメント向上に貢献してまいります。
またMLBの国際的な人気が高まる中、米国以外の様々な国のファンに野球観戦が楽しめるよう、MLBワールドツアーのオフィシャルパートナーとして、東京シリーズを含むワールドツアーの「ホスピタリティ・パッケージ」を米国以外の世界中のファンに提供してまいります。
JTBの事業ドメインは、「交流創造」です。デジタル基盤の上に人の力を活かし、地域と組織の価値を共創し、人流や情報流、物流を生み出すことで、人と人、人と地域、人と組織の出会いと共感をサステナブルにつくり続けることでお客様の実感価値を向上してまいります。その担い手となる社員がその力を十分に発揮できるよう、コンプライアンスの遵守とDEIBを基本に据え人的資本を強化してまいります。
『交わる先に、新たな未来。』1912年の創立以来、JTBは旅を通して、心が動く瞬間をつむいできました。旅路を超えて培った知見と経験で、私たちにしかできない「交流創造」を通じてサステナブルな社会の発展に向け努力を続けていくことをお約束し、年頭のご挨拶といたします。
※写真=山北栄二郎JTB社長