ウイングトラベル
JTB高橋社長、旅行業モデル転換が眼前に
ソリューション・ビジネスへ変革の年
JTBの高橋広行社長は1月17日に開催されたJTB新春経営講演会で、2019年の見通しについて、マーケット全体は期待が持てるものの、顧客のパーソナル化と商品のダイナミック化による価格変動が加速し、「近い将来、パンフレットに旅行代金を掲載することすら難しくなり、行程や価格を固定した企画商品を中心したビジネスモデルからの転換が求められ、商品造成、販売のあり方を根底から変えなければならない時期が眼の前に来ている」と業界が変革期にあることを強調した。その上で、JTBは「第三の創業」をめざし、「旅行商品を企画し販売する旅行業モデルからソリューションモデルに転換する大きな変化を遂げる1年にする」と明言した。
2018年、海外は欧州・韓国中心に需要好調
訪日は個人化とオーバーツーリズムが課題
2019年「グローバルMICEの年」に期待
GW10連休で海外・国内旅行が拡大
2019年の旅行マーケットの見通しについて高橋社長は、10月からの消費税増税と中米の貿易摩擦などを「若干の懸念材料」としながらも、「大いに期待できる年」とし、訪日旅行は12.3%増の3550万人、海外旅行は1.1%増の1910万人、国内旅行は1.5%増の3億1000万人とJTBの予測人数を改めて示した。「訪日は2020年の目標4000万人達成も見えてくる。また、日本人の国内・海外旅行市場も比較的堅調な経済情勢と国際情勢の緊張緩和を背景に、昨年よりも増加すると見ている」と述べた。
また、「今年はグローバルMICEの年」と位置づける。ラグビーワールドカップが全国20箇所で分散して開催。大阪ではG20サミットと、その関係閣僚会議が全国各地で開催。横浜で環境開発会議、京都でUNWTOとユネスコの観光と文化をテーマとした国際会議も開かれる。10月には即位の礼の関連式典が東京で執り行われる。
マーケット拡大も質的な対応が業界の課題
AIとヒューマンタッチの融合を引き出す
自前主義やめアライアンス協業で価値創出
経営改革断行し、交流創造事業を進化
高橋社長は昨年4月からスタートしたJTB統合による経営改革の進捗状況を説明した。これまでの地域を軸にした体制から個人・法人を軸とした事業単位に再編したことで、事業毎の戦略・執行、様々な施策、商品企画が数段にスピードアップ。また、統合したことにより各事業の選択と集中に応じて、最適な要員の再配置を進めている。
具体的には、「JTBならではの価値を目指すべき姿は、旅行にとどまらないヒト、モノ、情報のすべてが交差する広域の場面をフィールドとして、デジタルテクノロジーとヒューマンタッチを融合させたソリューションを内包した商品やサービスを提供する」。
その上で、「大事なポイントは自前主義に固執しないこと。新しい価値を創り出すには自前の能力では限界がある。その一例が、昨年11月に発表したJTBとAGODA社との包括業務提携。オンライン宿泊販売の拡大と仕入れ機能の高度化を図るためのもので、双方の強みを活かし、オンライン市場の激しい戦いの中で、JTBならではの価値をお客様に提供できる。AGODA社などのOTAとは競争相手として捉えることが多かったが、双方の強みを活かすことで、宿泊在庫の消化率を高めることや客室の効率販売に貢献できると確信している」と会場に詰めかけた旅館・ホテルの事業パートナーに対して理解を求めた。
※写真=2019年の旅行市場の見通し、JTBの取り組み、経営改革を語る高橋広行社長