ウイングトラベル
【潮流】国際観光旅客税の使途を考える
政府・与党は国際観光旅客税の引き上げを検討している。現行の1000円を2000円に倍増させる方針が有力だが、その目的と使途について、改めて議論を深める必要がある。
国際観光旅客税は2019年1月に導入された。施行当初から「受益と負担の公平性」に関して問題視されてきた税制であり、日本人の海外旅行者にとっては、実質的に新たな「出国税」として機能している。しかし、その税収の大部分は訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備やプロモーションに充てられ、日本人旅行者が享受する直接的な利益は極めて限定的である。この構造的な問題が改善されないまま税率の倍増が進められるとなると、これを機に、アウトバウンドに対する受益を再考するべきだ。
国際観光旅客税の導入時、政府は「観光先進国の実現に向けた財源確保」として、主に三つの分野に税収を活用すると説明していた。第1に、訪日外国人旅行者が日本国内を快適に移動できる環境の整備。第2に、観光情報の取得を容易にする仕組みの強化。第3に、観光資源の維持・向上を目的とした地域支援である。これらの目的自体に異論はないが、問題はその税収のほぼ全てがインバウンド向けに使われ、日本人の海外旅行に対する支援がほとんどなされていない点である。