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2025.01.20

WING

火星中緯度に豊富な地下氷、衛星画像から精密推定

 将来の火星有人探査で飲料や燃料で活用期待も

 

 岡山大学と高知大学らの研究チームが、火星中緯度で地下氷が豊富に存在する場所を精密に推定することに世界で初めて成功した。火星周回衛星が取得した衛星画像を探索し、地下氷の存在により形成される周氷河地形の分布を調べたことで明らかにした。
 これは岡山大学大学院環境生命自然科学研究科(博士前期課程)の佐古貴紀さん(高知大学理工学部卒業生)、高知大学理工学部の長谷川精准教授、岡山大学惑星物質研究所のルジ・トリシット准教授、イタリア・ダヌンツィオ大学惑星科学研究大学院の小松吾郎准教授(千葉工業大学惑星探査センター客員主席研究員)、東京科学大学地球生命研究所(ELSI)の関根康人教授らの研究グループが行った研究だ。

 

※画像=火星の浅部地下氷を水資源として利用する火星有人探査のイメージ(提供:岡山大学)
 現在の火星は極寒乾燥な環境からなり、地表に液体の水は存在しない。しかしながら地下数十cm~数mには、永久凍土の形で多量の水氷が存在していると考えられている。この浅部地下氷は、2040年代に計画されている火星有人着陸探査の際に、飲料や燃料の形で水資源として利用することが可能と見込まれており、有人探査することが可能な火星のなるべく低緯度域に、浅部地下氷が豊富に分布する場所を正確に把握することが求められていた。
研究グループは、地球の永久凍土地帯に広がる「周氷河地形」に着目。米国航空宇宙局(NASA)の火星周回衛星「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮像した高解像度衛星画像(HiRISE)を用いて表層地形を観察し、有人探査候補地の北半球中緯度域(N30~42)において、地下氷が豊富に存在する場所を探索した。
 その結果、アラビア台地、ユートピア平原、アマゾニス平原の領域に周氷河地形が多数分布し、浅部地下氷が豊富に存在する可能性が高いことを明らかにすることに成功した。この研究で明らかになった周氷河地形の分布領域は、隕石衝突により形成された新しいクレーターの底部で地下氷の露出が確認されている場所や、気候モデルにより推定された多量の降雪がある場所とも一致しており、この場所を将来の火星有人探査時の着陸候補地として提案した。
 なお、この研究成果は、米国地球科学連合が発行するオープンアクセス科学誌「Journal of Geophysical Research: Planets」に、昨年12月30日付けで掲載された。